僕には ページ39
冷たい雨が、気持ちよかった。
傘も差さず、ずぶ濡れになりながら、寂れた公園のブランコに腰を降ろしている。
「やっと見つけた……椿、さん」
自分を呼ぶその声は、どこか懐かしくて。
椿「……A…ちゃん」
走ってきたので、傘を差しているにも関わらずどこもかしこも雨でびしょびしょしていた。
肩で呼吸を整えながら、目の前に居る人を真っ直ぐと見据える。
椿「Aちゃん…?なんで、僕のこと……」
理解出来ないと言うように、大きく目を開けるその人は、記憶の中のそれと全く同じ人だった。
「……全部、思い出したんです。勿論、…椿さんの正体のことも」
椿「だからってなんで……なんで…っ」
その人はブランコから立ち上がり、1歩、後ずさった。どこか悲しげにAを見つめる目。
「椿さんのことが、大好きだからです」
Aはそう言って笑ってみせる。濡れるのを承知で傘を閉じ、公園の柵に掛けておいた。
「最初は、戸惑いました。あの日だって、驚いて貴方を拒絶してしまった。貴方を思い出した日だって、貴方の事なんかって、思ってしまった。」
静かに歩み寄る。
椿「ダメだよ…来ちゃダメだ……君がまた、傷ついてしまう」
「大丈夫。椿さんは、私を傷付ける人なんかじゃない。私が勝手に思い詰めていただけです。…大事な事に気付けてからは、椿さんに会いたくて仕方がなかったんですよ?」
その人は、涙を溢した。小刻みに震えて、眉尻を下げる。
「……お母さん達は、私をみて、泣いて喜んでくれました。少しだけ、私を見てくれました。それは本当に嬉しかった…でもね、それじゃ足りなかったんです」
Aはその人を見上げた。
「貴方の温もりじゃないと、私は幸せだって思えなくなってました。椿さんじゃないと、幸せにはなれませんでした」
椿「…Aちゃん……」
雨は弱まったが、心無しか先程より冷たく感じる。
「私は、椿さんが大好きなんです。私を見つけてくれた、大切に思ってくれた、椿さんが大好きです。」
溜め込んできた想いを、ここに。
「今日、椿さん…貴方に会えてよかった」
胸の内を、貴方に。
「椿さんがよかったらでいいです……また、私と……」
椿「_______ダメだ、Aちゃん。僕には無理だ…っ」
186人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葵 - 続きを読むのが楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年7月4日 22時) (レス) id: c2fac8b8e1 (このIDを非表示/違反報告)
佐糖さん。(プロフ) - 葵さん» 初めまして、ありがとうございます^^ やっぱりコメント貰うと嬉しくなって効率が上がりますね(単純)私が日々妄想してきたラストまであともう少し!それまで私の妄想に付き合って頂けたら嬉しいです! (2017年7月4日 0時) (レス) id: bb39dbcc66 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 初めまして!夢主ちゃんと椿さんがどうなってしまうのか、気になります!更新頑張って下さい! (2017年7月3日 23時) (レス) id: c2fac8b8e1 (このIDを非表示/違反報告)
佐糖さん。(プロフ) - 狐灯さん» ありがとうございます。血は結構な量でしたよ、その時着てた服は下着まで血みどろでした^^まあ、「お、なんかいっぱい血出てる」としか認識してませんでしたけど…笑 夢主ちゃんがこれからどうなるのかは…なにも言えませんね笑詳しくはwebで!(なにも載ってないです) (2017年7月3日 1時) (レス) id: bb39dbcc66 (このIDを非表示/違反報告)
狐灯 - 死ぬほど…!?む、無理しないで下さいね…?お話、凄く好きです!これからどうなってしまうのか…気になります…!女の子が、何を選択するのか…また、椿さん達と笑える日々が来れば良いなぁ…って、思ってしまいますね…(苦笑) (2017年7月2日 22時) (レス) id: 9ad341cd76 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:佐糖さん。 | 作成日時:2017年1月15日 16時