思い出したい ページ27
頭を撫でられるのも
じっと見つめられるのも
優しく抱きしめてくれるのも
ぜんぶ、ぜんぶ____
「…前と違って、お父さんとお話ができたり、お母さんと一緒に笑えたりして、今は幸せなんです。それを一番望んでいたから。…でも、その……」
すぐに言葉が出てこなく、口を濁していると、「ゆっくりでいい」と声をかけられた。その一言にAは丁寧に呼吸をし、心を落ち着かせる。
「……でも時々、それを物足りないだとか、この人はあたたかくないだとか…よく分からない気持ちになるんです。何でだろうって、自分なりに考えたんですけど、もしかしてそれはあの事と関係あるのかなって……」
「それで、半年間のことを全部思い出したい、と…?」
目の前のカウンセラーは、眉に少し皺をつくりながら問う。
「……はい。」
ベル「…アイツやっぱバカじゃないのォ、まったく……」
ベルキアは一人で何やらブツブツと唱えながら、ベッドに腰を下ろす。
その手には、一冊のスケッチブック。
ベル「これ、つばきゅんに見せない方がいいのかなァ…」
椿「ベル、どうしたの?」
ベル「ぎゃあっ?!」
ひょこっと顔を出した椿に驚き、少しオーバーなリアクションを取る。その拍子にベルキアの手にあったスケッチブックは椿の足元に落ちてしまった。
椿「ベルがAちゃんの部屋に入るなんて珍しいから、気になって見てたんだよ〜……僕に見せない方がいいものってこれ?」
笑顔を浮かべながらしゃがみこみ、足元のそれを拾う椿。
ベル「ちょ、つばきゅん!それはッ……」
椿「何?Aちゃんのものを僕が見たら、Aちゃんを思い出しちゃうから?思い出して、落ち込んじゃうからダメなの?」
図星だったようで、ベルキアはぎょっとして動かなくなってしまった。椿はそんなベルキアに、また笑顔先程の笑顔を向ける。
椿「…大丈夫だよ、自分の中ではもう吹っ切れたつもりだから」
ベル「……わかったよォ、つばきゅん。僕は知らないからねェ!」
半分納得をしていないような、苦い顔をしながら、ベルキアは部屋を立ち去った。
椿は手元にあるものをまじまじと見つめる。
前までAが使っていた、ごく普通の、何ら変わりのないスケッチブック。
椿はそれをしばらく見つめ続け、パラパラとページをめくってみた。
椿「____あはっ、参ったなぁ、もう……」
それに描かれていたのは、全て椿達の笑顔だった。
椿「Aちゃん……っ」
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葵 - 続きを読むのが楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年7月4日 22時) (レス) id: c2fac8b8e1 (このIDを非表示/違反報告)
佐糖さん。(プロフ) - 葵さん» 初めまして、ありがとうございます^^ やっぱりコメント貰うと嬉しくなって効率が上がりますね(単純)私が日々妄想してきたラストまであともう少し!それまで私の妄想に付き合って頂けたら嬉しいです! (2017年7月4日 0時) (レス) id: bb39dbcc66 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 初めまして!夢主ちゃんと椿さんがどうなってしまうのか、気になります!更新頑張って下さい! (2017年7月3日 23時) (レス) id: c2fac8b8e1 (このIDを非表示/違反報告)
佐糖さん。(プロフ) - 狐灯さん» ありがとうございます。血は結構な量でしたよ、その時着てた服は下着まで血みどろでした^^まあ、「お、なんかいっぱい血出てる」としか認識してませんでしたけど…笑 夢主ちゃんがこれからどうなるのかは…なにも言えませんね笑詳しくはwebで!(なにも載ってないです) (2017年7月3日 1時) (レス) id: bb39dbcc66 (このIDを非表示/違反報告)
狐灯 - 死ぬほど…!?む、無理しないで下さいね…?お話、凄く好きです!これからどうなってしまうのか…気になります…!女の子が、何を選択するのか…また、椿さん達と笑える日々が来れば良いなぁ…って、思ってしまいますね…(苦笑) (2017年7月2日 22時) (レス) id: 9ad341cd76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐糖さん。 | 作成日時:2017年1月15日 16時