デート 1 ページ1
「さぁ、参りましょう!」
私はノゼル様の手を取って、歩き始めようとする。
ーと
ノ「待て、A。上に乗れ。」
おもむろに懐から出したのは、いつもの絨毯だ。
「ええ………嫌です…」
ノ「A。」
ノゼル様の語気が少し強くなった。
「せ、せめて少しだけ……」
ノ「……問答無用だ。
もしものことがあっては、私でも責任が取れぬ……」
まぁそんなこと、絶対に起こらせないが。相手が腹の中の未知の赤ん坊となれば、ノゼルに出来ることは限られてしまう。
かなり大きくなった腹を見るたびに、もう出かけるのはやめろと言いたくなる。だが、カーターの報告によれば危険なことはしていないようなので
今のところは口出ししていない。
今のところは。
「………手、繋いで歩きたかったのにな。」
ススス、、、と近づき、ノゼル様の手の甲を優しく握ってみる。そこから、上目遣いで涙目攻撃。
ノ「………ならん。」
「え!もっとこう?」
少し首を傾け、自分が出来得る限りの可愛らしい顔をしてみた。
ノ「いや…」
そういう問題では、と言いかけたが、
こほん、と軽く咳払いをして
ノ「A、どうしても乗らぬというなら…」
と続ける。
「いえいえいえ!それは嫌です!」
続く言葉は、「今日のお出かけは無し」という内容だろう。
ノ「では……」
今度はノゼル様が私の手を取り、絨毯に乗るのを手伝ってくれた。私は渋々絨毯に乗る。
確かに、足腰は魔で補強すればいくらでも歩けるが、お腹の子には悪影響だろう。
「ノゼル様は乗らないのですか?」
「…」
自分は乗るつもりは無かったようだが、Aが促すと乗り込んでくる。
地べたに座るという発想がもはや無いのだろう、立ったままだ。
絨毯はどんどん高度を上げ、建物が遠くなった。
「どこに行きましょう。」
とにかく一緒に過ごせればそれで良い。が、団長と一緒なら行ける場所も限られるだろう。
下手に出歩くと騒ぎになりかねない。
ノ「……この辺りで有名な魔道具店はどうだ?」
珍しく提案してくれた夫にAは内心とても喜ぶ。
「ぜひそこに行きましょう!!」
顔がにやけてしまう。下から見てもノゼル様は美しい。前をまっすぐ見る眼差しも、いつになく柔らかい気がした。
ノ(……また締まりのない顔を…)
チラリと見やるとニコッと笑顔が帰ってくる。
ノゼルはまた前を見やり、いつも以上にゆっくりと、揺れないよう、絨毯を操作した。
ーーー
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kzh - 3週目です!めっちゃ面白いし、全然飽きないし、毎回ドキドキしながら見てます!!更新楽しみにしてます! (2023年1月5日 14時) (レス) @page29 id: 8a619dd2b7 (このIDを非表示/違反報告)
LE(プロフ) - 更新来た!待ってました!!続き楽しみにしております。 (2022年11月23日 8時) (レス) id: 26edab818d (このIDを非表示/違反報告)
米留(プロフ) - 久久に覗いたら、まだ読んでくださっている方がいて嬉しいです!気が向いたら続きを書きます。褒めてくださってありがとうございます(*^▽^*) (2022年3月22日 16時) (レス) @page25 id: 0c6c4c24bf (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - この作品、、、さいっこうじゃないっすか、、、、、ノゼル様の口調がノゼル様すぎて好きです!!!!!! (2022年3月11日 5時) (レス) @page20 id: 99f3656a2e (このIDを非表示/違反報告)
とも - 続きが気になります!!楽しみにしてます!!! (2021年5月9日 3時) (レス) id: 17c26d4027 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:米留 | 作成日時:2020年5月25日 0時