知りたい過去（七緒side） ページ21
大会一日目が終わった夜。
素引きを終えたかっちゃんは部屋に戻ってくると
深く息を吐きながらベッドに寝転んだ。
七「何か心配事？」
座ったまま椅子をベッドの方向にくるりと向けて、少しだけ笑いながら言う。
海「…あいつが、」
七「あいつ？」
海「Aが、泣いてた」
え、と言葉に詰まる。
茶化したつもりだったが、
まさかの変化球でAちゃんの話しが出てくるとは思わなかった。
しかも泣いていたという。
目元を腕で覆ったかっちゃんは、
その時のことを思い出しながら苦く口を開いた。
海「集合かかってAだけいねぇってなったろ。
そん時に木の根元で泣いてた」
七「優勝したのに？」
海「賞状折って重しとして石置いてた」
普通、誰もが大事に扱う代物。
それを無造作に扱うなんて、
どれだけ辛く嫌なことがあったのだろう。
それで、と続きを促すと
かっちゃんは口を閉ざした。
七「かっちゃん？」
名前を呼ぶと、ゆっくり起き上がった。
ぼそりと呟く。
海「Aの左手首に傷があるんだよ」
七「傷？」
海「引き裂いたみたいな傷。
その傷を消したいみたいに、爪で思いっきり痕つけてた」
その光景を想像して、言葉を失った。
いつも気丈に振る舞っているAちゃんだけど、
たまに暗い表情をする。
それには男子部員全員気付いていた。
七「…中学生の時優勝したって言ってたけど、
その時期に何かあったのかもね」
ましてや、弓道の名門校である桐先の推薦を断る程だ。
家の事情で、と言っていたけれど
弓から身を引きたいとしか思えない行動。
それと手首の傷が、何の関係もないとは思えなかった。
七「いつか、話してくれるといいね」
弱々しく帰って来た返事に、
俺は溜息と同時に微笑んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 319人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
帝 - 27ページに過呼吸とありますが、過呼吸と言うのは呼吸のしすぎで、呼吸不足とは違います。こんなコメントからでごめんなさい。とても面白いです！ (2019年6月28日 21時) (
レス) id: 3e076c2094 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - ミコトさん» お気に入りと言って頂けてとても嬉しいです！！更新出来ない日が多々ですが、気長に待って頂けると嬉しいです(*´∀｀) (2019年3月8日 23時) (レス) id: bea7ebdcd5 (このIDを非表示/違反報告)
ミコト(プロフ) - 読んでいてドキドキします！お気に入りの話です!!続き、楽しみにしてます！頑張ってください^ - ^ (2019年2月26日 23時) (レス) id: 47f303260b (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 美冬さん» コメントありがとうございます！いやいや、ハマったと言って頂けるだけて嬉しいですよ(*´`*)更新ペースは遅いですが、応援を糧に頑張りたいと思います♪ (2019年1月27日 22時) (レス) id: 9bf512996a (このIDを非表示/違反報告)
美冬 - とても面白いです！最近ハマったばかりのにわかですが、楽しく読ませてもらっています！これからも頑張ってください！ (2019年1月18日 21時) (レス) id: efbc55a2af (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藍 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/itikara1141/
作成日時：2019年1月16日 0時
