38.珍しい声 ページ8
私は河川敷の草の上に腰を下ろして、相葉さんが男の子達に混じって野球をするのを見ていた。
真剣な顔でバッターボックスに立っている。
元野球部って言ってた。
そうなんだ、知らなかった。
相葉さんといると楽しい。
もっと知れば、もっと楽しい？
だんだん日が落ちて空が夕焼けで赤く染まって行く。
「ごめんごめん、本気で野球しちゃった」
相葉さんが笑いながら走って来る。
立ち上がって、草をはらっているとスマホが鳴った。
ディスプレイには、「松本さん」の文字。
珍しい。
休みの日にかかってくることなんて滅多にないのに。
「もしもし」
「俺」
「何かあったんですか？」
「…何で」
「休みの日に電話、珍しいので」
くくって笑った声が聞こえた。
「お前時々妙に鋭いな」
なんだかいつもと声のトーンが違う。
「松本さん…酔ってます？」
「悪いか」
「悪くないですけど…本当に何かあったんですか」
「美波と別れた」
え？
美波さん、と？
「今…どこにいるんですか？」
「関係ないだろ」
「でも」
「お前だけ知ってたから。言っておこうかと思っただけ」
「どこにいるんですか？」
もう一度聞くと、松本さんはため息を一つついたあと友達がやっているというバーの場所を教えてくれた。
電話を切ると。
相葉さんがこっちを見ていた。
「電話、松潤？」
「……」
「行くの？」
「…すみません」
「行くなって言っても？」
ぐいっと腕をつかまれる。
強い力。
「行くな」
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年3月22日 18時
