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次の日のお昼休み、トイレの個室から出ようとしたら、違う課の女の子達がドヤドヤ入ってきた。
「ねえ、やっぱり松本さんかっこいいよね！」
思わず耳をそばだてる。
「いい！仕事はできるし、さりげなく優しいよね」
「もー、まじでかっこいい」
「近くで見たらヤバイよね！」
「今日資料室で高いところの資料取ろうとしたら、後ろから取ってくれたんだ」
「よろけるフリして抱きついちゃえばよかったのに！」
企画部では怖いってよく言われているけど、あのルックスで、仕事ができるのは社内でも有名で。
平川さんがよく
「松本さんは他部署の女の子から人気」って言ってたな。
出るに出られなくなって、ドアの前に立ち尽くす。
「松本さん彼女いないって本当？
私本気でいっちゃおうかなあ」
「いないと思うよ。前に彼女いた時けっこうオープンに付き合ってたって聞いた」
「そんな感じする！
こそこそすんの俺はきらいだ！みたいな」
キャハハ、と高い声で笑いながら女の子達が出ていく。
私は一つの言葉がひっかかっていた。
前に彼女いた時けっこうオープンに付き合っていた？
美波さんは、秘密にしないとだめだったのだろうけど。
……私は？
私と付き合ってることはオープンにしたくないのかな。
考え始めると、醜くて黒い気持ちがもやもや渦巻く。
「Aちゃん？なんか元気ない？」
普段どおり仕事をしていたつもりだったけど、相葉さんにそう声をかけられた。
「そ…んなこと、ないです」
「魔法のアメ！って言いたいけど。あーげない」
「え？」
「もう必要ない、でしょ？」
相葉さんの視線の先には、松本さんがいた。
にこっと笑うと、相葉さんは行ってしまった。
午後、松本さんに声をかけられた。
「A、ちょっといいか。
備品室行ってコピー用紙取ってきて」
「あ……わかりました」
松本さんに言われて、台車を持って向かう。
言われた通りA4のコピー用紙を積んでいると、背後から腕が伸びてきてコピー用紙を取り上げられた。
振り向くと松本さんだった。
「お急ぎですか？とりあえずこれだけお持ちしましょうか」
「いらない」
「え？」
「口実だから」
気づいたら、後ろから抱きしめられていた。
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年3月22日 18時
