57.打ち合わせの続き ページ27
二宮さんは、駅前の適当な居酒屋を見つけるとすたすた入って行った。
「に、二宮さん」
「ん？何飲む？」
「いえ、あの」
「ビールでいいよね？すいませーん、生中2つ」
「あの！打ち合わせの続きじゃないんだったら帰ります」
「するよ。誰がしないって言ったの」
その後本当に、CMの資料をどさっと机の上に置いたので立ち上がりかけた腰を下ろす。
二宮さんは、薄く笑いながら頬杖をついて、そんなあたふたしている私を見ていた。
「気遣わないでいいからさ。本当のところ聞かせてよ。
企画者として、CMのイメージはどうだった？」
「すごく、素敵でした。イメージにも合っていると思います」
「どれが？」
「あの、最初に見せていただいた女の子が泣いているシーンから始まるもの」
「俺もあれがいいと思ってるんだけどさ。
なんかちょっと足んないんだよな」
二宮さんが、運ばれてきた生ビールをごくっと飲んだ。
「あの……素人の意見だって聞き流してもらって構わないんですが」
「なに？」
「クッキーを食べるのは確かに女性が圧倒的に多いんですけど。
落ち込んだり元気がない時に食べてもらいたいのは、老若男女問わずをイメージしていて」
二宮さんの薄茶色の目が、くるん、と動く。
「女の子だけじゃないのも、見てみたいかなって思いました」
「……」
「あ、本当に聞き流してもらって構わ…」
「いーじゃん」
「え？」
「パッパッって場面が切り替わるようにして、子どもとかじーちゃんばーちゃんとか入れよう」
二宮さんはぶつぶつ言いながら、資料に鉛筆でササッと走り書きをした。
「次の打ち合わせまでに、だいたいの形にして持っていくよ」
そうして資料を、がさっとまとめてカバンにしまうとまた頬杖をついた。
「で、さっきのオトコは本当に彼氏じゃないの？」
「相葉さんは…すごく尊敬していますけどそういうんじゃないです」
「ふーん。あっちの片思いか」
「ち、違いますよ」
「Aには別に好きな人がいる、とかそんなとこ？」
ぐっ、当たってる。
「そんなこと、二宮さんには関係ないじゃないですか」
「ま、そう言われちゃおしまいなんだけど」
やっぱりどこか楽しそうに、枝豆をつまむ二宮さんは、それ以上突っ込んで根掘り葉堀り聞くこともなく。
その後は、翔には何かと世話になっていて頭が上がらないとか、そんなことを話していた。
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年3月22日 18時
