54.できるやつ ページ24
「企画部の櫻井と申します」
「櫻井？あー、あなたが翔さんの」
名刺を交換したら、薄茶色の目でじっと見つめられる。
「翔の双子の姉、です。
いつも翔がお世話になってます」
「ふーん。あんまり似てないね」
「……よく言われます」
そんな会話をした後、打ち合わせが始まった。
翔が二宮さんを「すげえできるやつ」だって言っていた意味はすぐ分かった。
「CMはどれだけ印象に残るか、が勝負です。
商品のコンセプトが『元気をあげる』だからと言って、ただ元気なだけではだめです」
持って来てくれたイメージ画像は、モノトーンで一人の女の子が泣いているところから始まった。
クッキーを食べた女の子が笑顔になって、モノクロの画像に色がつく。
同席していた部長が感心したように腕を組む。
「なるほど、ね。
やっぱりセンスがいいですな」
二宮さんが、きれいに口角をあげる。
「ありがとうございます。
これはあくまでも私の案なので、なんなりと意見を言っていただければ」
その後いくつか出してくれた映像も、確かに心をひきつけられたし、説明もわかりやすい。
そんな風にビシッとしているかと思えば、部長が巨人ファンだと知って野球の話で盛り上がっている。
「いやあ、全面的に二宮さんにおまかせしよう。
きっといいCMができるよ、櫻井くん」
打ち合わせが終わるころ、部長はすっかり二宮さん贔屓になっていた。
私は何もかも初めてなので、話について行くので精一杯だし、確かに二宮さんのセンスは信頼できる気がした。
「よろしくお願いします」
私は、ぺこり、と頭を下げた。
次の打ち合わせまでに確認しておくことや、スケジュールを決めて、今日の打ち合わせは終わり。
部長は終始にこやかで、
「櫻井くん、下まで送って差し上げて」
と、私の肩をたたいた。
言われたとおり、エレベーターに一緒に乗り込む。
ドアが閉まって動き出すと同時に。
「今日ゴハン行きませんか」
「え？」
二宮さんに唐突に言われて思わず聞き返す。
「ゴハン」
「えっと……」
「部長さんがいたから、意見言いにくかったんじゃないの？
俺もまだ自分の中で固まってないから、もーちょい詰めて話しよーよ」
「あ……はい。じゃあ」
そういうことなら、と頷いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1316人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年3月22日 18時
