47.行き先 ページ17
次の日、翔が私をまず連れて行ったのは、おしゃれなセレクトショップ。
広い店内に男女どちらのものも、センスよくディスプレイされている。
「いらっしゃいませ、櫻井さま」
「この子に似合いそうな、ドレッシーな服と靴用意してもらえますか？」
「かしこまりました」
この子って……私？
店員さんが手にした服を手渡されると、翔に試着室に押し込まれた。
訳もわからず、とりあえず着てみる。
ボルドーの形はシンプルなワンピースだけど、タイトだから体のラインがはっきりわかるし背中が大きく開いている。
「翔……なんかこれ、恥ずかしいよ」
「へえ、似合うじゃん」
「とてもお似合いですよ」
店員さんが、首に大ぶりなネックレスをあてる。
「シンプルなワンピースですので、ちょっと存在感のあるアクセサリーを付けるのがお勧めです」
「じゃあ、そのネックレスとお揃いのピアスも」
「翔、待ってよ、買うの？」
「櫻井さまがお召しになっているものはどうなさいますか？」
店員さんの言葉に、翔も見たことのないスーツを着ていることに気づく。
「あ、これもいただきます」
私の言葉を無視して、翔はさっさと支払いを済ませてしまった。
「はい、次！」
次に翔が連れて来たのは私も名前くらいは知っている有名な美容室。
ガラス張りで床も椅子も白い。
「翔くん、こんにちは」
「どーも。マサトさんのセンスにまかせるから、この子よろしく！」
「え？ちょっと翔？」
「うふふ。腕が鳴るわあ。じゃ、こちらどうぞ」
ん？マサトさんの口調ってもしかして……って
そんなことはどうでもいい！
「髪切っても大丈夫かしら？」
「え？あ、はい……」
ここまで来て嫌だとも言えず、私は曖昧に頷いた。
伸びっぱなしだった髪に、手早くハサミを入れられる。
背中くらいまであった髪があっと言う間に顎のラインまで短くなった。
ボブにするのなんて、学生の時以来だけど。
そこはやっぱり、有名な美容室だけあってどことなく垢抜けていて、自分で言うのもなんだけど、大人っぽくなった。
「はい、出来上がり」
「おー、いいね。マサトさんサンキュー」
翔がアイドルみたいな笑顔を向けると、マサトさんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
美容室を出た翔は腰に手を当てて、宣言した。
「今日一日だけ、俺たち恋人な」
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年3月22日 18時
