45.カン ページ15
大野くんの前でぼろぼろ泣いたら、だいぶスッキリして。
月曜日出社する時は、なんとか気持ちを立て直すことができた。
駅から会社まで歩いていると、数メートル先に早足で歩く松本さんの背中が見える。
まだ胸は少し痛むけど、私は深呼吸をすると小走りで追いかけた。
「おはようございます」
「……はよ」
にっこり笑うと、そのまま足早に通り過ぎる。
好きって伝えることはできなくなったけど、せめて仕事で役に立てるように頑張ろう。
「俺が変えてやるよ」
そう言ってくれた松本さんの言葉を全部無駄にはしたくない。
「A、この間言ってたプリンの年間売り上げの比較資料なんだけど」
「あ、もうできてます」
「……サンキュ」
松本さんが立ち止まったまま資料を見ている。
「見にくいですか？作り直します？」
「……いや。すげえ見やすい」
松本さんが去って行くと、今度は相葉さんがばたばたとやって来た。
「AちゃんAちゃん！
このココナッツパウダーって材料どこで発注できるか調べられる？」
「あ、ヤシオフーズさんなら大丈夫とのことです」
「そうなんだー！ありがとう！」
相葉さんが、ふと真顔になる。
「Aちゃん、松潤と何かあったの？」
「……え？」
「なんか前と違うような気がする」
「……」
「カン、だけど。俺のカン当たるんだよね」
「何も…ないですよ」
相葉さんがじいっと私を見てる。
「……ならいーんだけど」
ポン、とアメを渡される。
「俺にはアメあげるくらいしかできないけどね。
何かあったら頼ってよ？」
「…ありがとうございます」
ウィンクらしきものをして、相葉さんが自分の席に帰って言った。
渡されたアメを食べずにポケットに入れた。
今は甘いアメを食べずに、もう少し仕事を頑張ってみよう。
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年3月22日 18時
