41.言いたい ページ11
結局松本さんはそのまま目を覚まさなかったので、マスターに後を頼んで私はバーを後にした。
週明けの月曜日、オフィスで松本さんに会うとどことなく照れくさそうだった。
「土曜日は、ごめん。
気づいたら朝で、あせった」
「いえ、いいんです。私も先に失礼しましたし」
「え⁈松潤寝ちゃったの？」
突然飛び込んできた相葉さんの声。
振り向くとイスから体をのけぞらせた相葉さんが、こっちを見ると、べーと舌を出した。
「せっかくAちゃんが俺とのデート、途中ですっぽかして行ったのに」
「ちょ、ちょっと相葉さん」
「え？」
松本さんが眉をしかめて私を見る。
「ちょっと来い」
資料室に連れて行かれる。
「お前、土曜日相葉さんと一緒だったの？」
「……はい」
「何やってんだよ、俺のとこ来んなよ。
電話だって無視すればいいだろ」
「……」
「分かった、相葉さんには俺がうまく言っとくから」
「いいです」
「は？」
「私が自分で決めたことですから。
電話に出ることも松本さんのところに行くことも」
「どういう意味…」
と、その時、資料室のドアが開いた。
「あ、いた。松本さん、ヤシオフーズさんから外線1番にお電話です」
「…すぐ行く」
松本さんが、踵を返しながら言った。
「また改めて話聞くから」
バタンと閉まったドアに向かって呟く。
「好きだから、です」
眠った横顔に、じゃなくて。
ドアの向こうにいる後ろ姿に、じゃなくて。
今度こそ言いたい、と思った。
真正面から胸を張って。
好きですって、言いたい。
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年3月22日 18時
