第907話 瞳。【CM Side】 ページ7
【CM Side】
翌日僕達は前回の旅行で行けなかった
Aの小学校に向かった。
自転車で10分もしない距離だけど
歩いて通うには少し遠いかも。
二人乗りして後ろから抱きつきながら
僕がスピードを上げると
「きゃー」っと楽しそうに叫ぶA。
学校に着くと嬉しそうに走り出す。
Aは懐かしそうに校庭の遊具を見て
その小ささに驚いていた。
鉄棒なんか僕の腰よりも低くて
楽々と腰掛ける僕を見てクスクスと笑う。
教室の中には入れないけれど
海の近くの学校だから
窓から水平線がキレイに見えるらしい。
それを僕に見せられなくて
残念そうにしていて…
そんなAをあやすようにしながら
僕達は少し高くなってる丘に登り
遠くの景色を眺めていた。
CM「実家ーに帰るとー、必ずここにー…来る？」
A「…なんで知ってるの？笑」
CM「お父さんがー、教えてくれた(^^)」
Aは「あぁー」と言いながら
少しだけ微笑んでまた海を眺める。
そしてここに来る理由を話してくれた。
A「こんな田舎だから、子どもも少ないの。」
CM「あぁー…みんな都会に行く？」
A「うん…だからご近所さんみんなが可愛がってくれてた。」
CM「んー…」
A「私、愛嬌があるから(笑)」
CM「ん、それで？」
A「……(笑) それでー(笑)」
CM「んー(笑)」
A「こんな遠い学校まで歩いて通ってると、いつもすれ違う大人が"いってらっしゃーい"とか"おかえりー"とか声をかけてくれてて…」
CM「んー」
A「運動会とかお祭りとか、普通の学校よりも寂しくてさ(笑) だけど村中みんなが学校に集まってて、そんなイベント行事が大好きだった。」
そう言うと懐かしそうに微笑む。
その横顔がキレイで
僕は思わずAの手を握った。
A「それで、私が東京で暮らすって時も、ここにみんな集まってくれて、みんな寂しがってくれて…でも、"頑張れ！"って応援してくれた。」
CM「……」
A「だからここに来ると、また頑張れそうな気がして…」
CM「んー…」
A「…やっぱり今日も力をもらったよ。」
CM「……」
A「チャミ。」
CM「ん？」
呼ばれて振り向くと
僕を見つめるAの２つの瞳。
その瞳は少しだけ潤んでいて
寂しそうな、でも強い眼差しだった。
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作者名：natsu
| 作成日時：2012年4月27日 1時
