Begin...【changmin】 (ページ33)

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ep33 ページ33

名前も顔さえも知らない
あの人の優しさに触れ…

あの人が離れたあと
なんだか人恋しくなって
また泣いていた。

A「う゛ぇ～ん(泣)」

もうこんなに泣いてるのに
涙が止めどなく溢れてくる。

体中の水分が
無くなってしまうんじゃないかって
本気でそう思うくらい。

そのうち、どうしてこんなに悲しいのか
どうしてこんなに泣いてるのか

それさえわからなくなる。

A「う゛っ…(泣)」

でも、"忘れよう"なんて思ってない。
今度は何も考えてないよ。

ただ、"早く思い出になれ"って。

あの人が言っていたように…

しばらくグズグズ泣いていると
入口付近が騒がしくなってきた。

どうやら、奥の個室にいた
団体のお客さんが帰るみたい。

ぞろぞろと移動しているのが
話し声や靴の音でわかる。

A「……」

さっきのあの人は
この中の誰かなのかな？

もう帰っちゃうの？

せめて、「ありがとう」だけ言いたい。

だけど、こんな顔じゃあ
呼び止める事さえできない(泣)

A「う゛ぅ～～(泣)」

なんか、なんでも涙が出てくる。
完全に涙腺スイッチはオンだなぁ…

そんな風にぐるぐると
頭を悩ませては泣いていると
横から１人の人が近づいてきた。

あ…きっと彼だ。

顔なんか見れないけど
直感が働いて、そう思った。

―――― フワッ

A「……」

私の髪を撫でる手。

それはぎこちなくて
でも優しくて…

大きな手で２、３回
私の髪を撫でると

耳元で小さく
「また話聞きます」と囁いた。

"また"…？

それは、ここで会おうって意味？

どうやって？なんで？

そんな事が一瞬の内で頭を巡っていると
彼は私の手に紙切れを握らせた。

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団体の足音が消えて無くなり
またＢＧＭのみの静かな店内に戻る。

私はほんの少しだけ顔を上げて
周りに誰もいないのを確認すると

手の中に握りしめていた紙切れを
そっと開いてみた。

A「……」

連絡先…

一瞬戸惑ったけど、正直ほっとした。

普段だったらナンパだって思うし
そうゆうのは苦手な私。

だけど、たったの数分間。

彼と話した短い時間だけで
彼を信頼し必要としている自分がいる。

私、ひとりじゃないんだ…

…そう思える。

また彼と繋がっていれる。
今はただそれが嬉しかった。