エピソード39 ＊ 失った日 ページ2
豪炎寺が呆然とする中、あたしはゆっくりと語り始めた。
昔、あたしがまだ『日渡』だった頃。
その頃の話を…。
「…その子は、所謂五体不満足で生まれてきた。
理由はもう忘れてしまったしどうでもいいから知らない。
でも、両腕が機能していない状態だった。
それを不幸だと思ったことはない。
それに関して母を恨んだこともない。
…だって、その子の家族は、一日も欠かさず、自分の時間が削れることも厭わずにお見舞いに来てくれていた。
いつも、家族の温かさをくれた。
そんな中、手術ができる病院に移動することになったの。
稲妻総合病院…近くで一番大きい病院だった。
その病院で、女の子は手厚い治療を受けて。
見事両腕を手に入れてみせた。
ずっと病院で過ごしていた彼女が、初めてなんの心配もする必要がない状態で家族と共に外に出られたのは、奇跡に等しかった。
その子も、母も父も兄も妹も…皆笑顔を浮かべていた。
……なのに…その幸せは、退院後わずか2日で崩れ去った。
表向きは不慮の事故…そんな風に片付けられた事件。
その事件に巻き込まれたのは…女の子以外の家族全員だった」
ほんの少しだけ口角を上げながら告げる。
豪炎寺が、息を呑んだのがわかった。
「本当なら、女の子もその場で死んでいるはずだった。
…なんで助かったか。
兄が、彼女を突き飛ばしたからよ。
鉄骨が降ってくる範囲から、彼女を思いっきり突き飛ばして離したの。
…その兄の行動のおかげで、彼女は命を救われた。
……でも、彼女はもう空っぽだった。
ずっとずーっと、自分の世界の全てだった家族を…一瞬で失ったんだから」
静かに、ただ静かにあたしの話に耳を傾ける豪炎寺。
…でも、なんで。
「…………」
「…? 日渡…?」
なんで。
「……なんで、豪炎寺がそんなに辛そうな顔をしてるの…」
あたしが語り続けている間。
彼はそれは哀しそうに…哀愁を帯びた瞳で、遥か彼方を見つめていた。
まるで自分のことのように。
豪炎寺がゆっくりと口を開く。
彼の口から零れた言葉に、私は息を呑んだ。
「…お前が、あまりにも辛そうな顔をして語るから。
今にも…泣きそうな、そんな顔をしているから…まるで自分のことのように考えてしまった」
なんだか、ずっと封じ込めていた気持ちを知ってしまったようで。
…心なしか、目の前が滲んでいるような気がして。
両手で顔を覆った…その瞬間。
温もりが、あたしを包み込んだ。
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北星 ベガ(プロフ) - ソラノさん» なんて勿体無いお言葉…!!頑張ります! コメントありがとうございました!!(*´∀｀*) (2017年9月22日 20時) (
レス) id: bad6c4af49 (このIDを非表示/違反報告)
ソラノ - めっちゃ面白いです！これからも頑張ってくださいね！応援してます！ (2017年9月22日 15時) (レス) id: d3f0b80636 (このIDを非表示/違反報告)
北星 ベガ(プロフ) - あいかさん» コメントありがとうございます!! 私的に沖縄編は書くのを楽しみにしていたので、更新頑張りますね!!笑 (2017年9月16日 8時) (レス) id: 527e4dd4ac (このIDを非表示/違反報告)
あいか(プロフ) - これから一体どうなってしまうのか気がかりですので、また更新頑張ってください！！ (2017年9月16日 8時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
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