ピアス (ページ6)

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帰り道ページ6

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紫耀「ほら、乗って」

『もう…知らないからね！』

私は渋々、後ろの荷台の部分に横向きで座った。

『ねぇ、倒れないでよ？』

紫耀「大丈夫だって。なめんなよ」

動き始めた自転車は案外、安定していて

これが男子高校生の力か、と思い知る。

紫耀「右とか左とか言ってよ」

『あ、あぁ…右！あ、嘘、やっぱ左！』

紫耀「おいおい…右左もわかんねぇのかよ」

私のせいでグラグラと傾く自転車。

その度に、ふわっと香るバニラの匂い。

それは、確実に紫耀から発せられていた。

『あのさ…単刀直入に言うけど、ヤンキー？』

紫耀「…単刀直入にも程があるだろ」

ずっと聞きたかったことを我慢せずに聞くと、

前にいる紫耀の表情は全く見えないけど

恐らく、私の質問に驚いているはずだった。

紫耀「ヤンキーじゃないよ。ちょっと悪いガキ」

『悪ガキ？』

紫耀「…うん。そう思っててくれればいい」

『悪ガキってかっこいいね』

紫耀「褒めてる？」

『うん！まわりに流されない感じが』

私は金髪好きだったな～と呟くと

俺だって染めたくなかったよ、という言葉が

前から聞こえた。

『あ、ここ！着いた！』
　

紫耀「本当に近いんだな」

『そうなの！楽だからあの学校にしたんだよね』

紫耀「そうなんだ」

見慣れた家の前で

ゆっくり自転車から降りると

またね、と手を振った。

紫耀「じゃあ、明日」

『うん、気をつけてね！ありがとう！』

見えなくなるまで後ろ姿を見送ると

くるっと回って家のドアに手をかけた。

廉「A？」

聴き慣れた声に後ろを振り返れば

やっぱりそこにいたのは廉だった。

『あ、廉！今からサッカー？』

廉「そ。Aは？何してたん？」

『あ、あぁ…ちょっとね』

紫耀のことを心配していたのを思い出し、

本当のことは言わずに適当に誤魔化した。

廉「あ、そう。じゃあまたな」

『うん！またね』

私は廉に軽く手を振ると

今度こそ、家の中に入った。

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