ピアス (ページ5)

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廉「A、帰るぞ」

『ごめん、今日は先帰ってて』

いつものように席まできた廉に

ごめん、と手を合わせて謝れば

怪しがりながらも了解してくれた。

紫耀「あれ、何？」

『あれって…幼馴染みの永瀬廉だよ！

いいやつだから仲良く…』

紫耀「ただの幼馴染みね。じゃあいいや」

ほら、早く案内してよと唆す彼に

またごめんと謝りながら廊下を出た。

『えーと、ここが音楽室ね』

紫耀「おぉ、なるほど」

長い廊下にポツンポツンと現れる部屋を

一つ一つ説明していけば

意外にも素直に頷く紫耀。

『ここは美術室。あ、紫耀は部活入らないの？』

紫耀「部活？めんどい」

『なんかスポーツやってた？』

紫耀「やってないけど出来る」

習ったことないのに

習っている人よりもうまい。

そういう人、たまにいるんだよな。

紫耀「Aは？部活やってんの？」

『ううん！バイトあるからさ』

紫耀「バイトしてんのか…」

バイトを言い訳するけど

本当は自分に出来るものがなくて

ただひたすら逃げているだけだ。

運動も勉強も芸術も全部平凡で

秀でたものが何もない。

だから何にもしたいと思えない。

『…まあ、気が向いたら入りなよ！』

紫耀「永瀬ってやつはなんか入ってんの？」

『廉？廉は外部でサッカーやってるの！

廉、すごいサッカー上手くて』

私がそう言うと、

紫耀は興味なさそうに、ふぅんと言って

それ以上何も聞いてこなかった。

その後も色々な階をまわり、

その度にお互いのことを話していると

あっという間に辺りは暗くなっていた。

紫耀「今日はありがとな。送っていくよ」

『えっ！いいよ！家近いし』

紫耀「いいから。俺チャリだし、乗ってけば？」

『まさか二人乗り！？』

私が大きな声で驚くと

逆に、私の声にビックリしている紫耀。

『捕まるよ！？』

紫耀「…は？」

『田舎だと思って馬鹿にしちゃダメだよ？

意外とおまわりさんは見てるんだから！』

私がそう言っても

紫耀は全く気にしていない様子で

気付けば自転車置き場に着いていた。

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