ピアス (ページ33)

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ren side
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『平野、ちょっといい？』

Aに用事があると伝え

久しぶりにAのいない放課後に

俺が声をかけたのは平野だった。

紫耀「…どうかした？」

『俺、平野に謝りたい』

思い切ってそういうと

不思議そうな表情をする平野。

俺が裏切ったことなんてもう忘れてしまったのか。

『屋上、行かへん？』

紫耀「…おう」

屋上では冷たい風が吹いており

自分が学校にいられるのもあと少しだと実感した。

『平野。俺、体育祭の前日、ずるいことした』

紫耀「…先にAに告白したってことだろ？」

『俺、引越しすんねん。

だからそれを口実に付き合ってもらっただけなんよ』

自分で言って、なんて情けないやつだろうと思った。

これを聞いて平野は怒るだろうか。

それとも呆れて笑うだろうか。

紫耀「でも、Aが選んだのはお前じゃん」

予想外の言葉に驚き、前を見れば

微かに微笑んだような平野の姿があった。

そのとき、平野の真の強さを見た気がした。

紫耀「俺も学校やめるから」

『え…？』

紫耀「例え引っ越しても、Aの事守ってやれよ？

これ、俺の電話番号。なんかあったら言って」

そう言う平野の目はとても真剣だった。

平野はAが自分のことを好きだと気づいていないのか。

それとも俺のことを気遣ってくれているのか？

長い間、一緒にいたくせに

いつまでも想いを伝えられなかった俺に

最後の時間を与えてくれているのか？

小さくなっていく平野の背中を見ると

なぜか涙が出そうになってしまい、慌てて拭った。

俺はこんなにも弱い人間だったのか。

Aを守るのは

俺じゃなくて、平野ではないかと思った。

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