ピアス (ページ16)

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『今日の朝大変そうだったね…』

紫耀「…見てたのかよ」

『だって、たまたまその場にいたから』

紫耀はそんなこと気にもしていないという様子で

いつも通り、窓の外をぼんやり眺めていた。

　
『片耳ピアスってそんな意味があったんだね！』

紫耀「うん。前の高校の先輩が教えてくれて

俺も真似しよう、って思った」

そう言う彼の視線は窓の外のままで

美しい横顔がしっかりと私の目に映る。

紫耀「なに見てんの？」

『あっ！なんでもない…ごめん』

気付けば紫耀に声をかけられていて

自分が見惚れてしまっていたことを知った。

その恥ずかしさに慌てて目を逸らす。

「おい～、後ろの2人。うるさいぞ」

『…あ！私！？す、すみません』

先生の声がしたかと思えば

注意されたのは私たちだった。

みんなからの視線が刺さって恥ずかしい。

そんなクラスメイトの中に廉を見つけ

さらに恥ずかしさが倍増する。

しかも廉の表情はとても怪訝そうだった。

紫耀「Aのせいだからな？」

『…え！？なんでよ～』

紫耀「普通に考えてそうだろ！」

紫耀に罪をなすり付けられたのと

廉の迷惑そうな顔を思い出したので

私はこの上なく不幸せな気持ちになった。

紫耀「怒られたくらいで拗ねんなよ～ガキか？」

『もう喋りかけないでよ！また怒られる！』

怒られたのになおも話しかけてくる紫耀は

全く気にもしていない様子だった。

怒られ慣れているのか？

そんな疑問を抱きつつも、目線を前に戻し

これからは静かにしようと決意する。

ふぅ、と息をつくと

隣からまた呆れたように笑う紫耀が

視界の片隅に入ってきた。

そのとき不意に

初めて紫耀と出会った日のことを思い出した。

最初見たときは驚いた。

あんな不良みたいな人が学校に来るなんて

誰も思ってなかったから。

初めて声をかけた時もこんな風に笑われたっけ。

本人には絶対に言わないけど

私は紫耀のこの表情が好きだったりする。

初めて出会ったあの日から

今もずっと変わらず

大人っぽくて余裕に溢れた笑み。

そんな表情が出来るのは

世界で紫耀だけである気がする。

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