王馬小吉の夢短編集 (ページ9)

今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:948 hit

. ページ9

チュっ

そんな私の淡い願いも崩れたようで王馬君の舌が私の口をこじ開けようとねじ込んでくる

さっきまでの可愛らしい音は何だったんだというほどえげつない音が私の口から出ている

『…っプハ!いやーAちゃんって多分今のがファーストキスでしょ?』

『鼻で息するのもヘタだし』

こちらを馬鹿にするような声が聞こえる

『オレはねー、そんなAちゃんのためにコレ持ってきたんだよねー』

目から手をどかしズボンのポッケをガサガサと漁る王馬君が差し出してきたのは

『…チョコ?』

『そうっ！Aちゃんってー未だに"ファーストキスはレモン味"とかそういうの信じてそうだからさー』

『…だから何……？』

『否定しないってことは、ホントなんだねー』

『早く目的を言いなよ』

イライラしながらも王馬君の口車に乗るまいとさっさと話を切り上げる

『うん、じゃあ言うね～ほら、オレって優しいじゃん?
だからAちゃんの夢を壊したくないな〜って思ってさ』

そう言いながらチョコの装飾をあけ、小粒程のチョコを口に含んだ

…嫌な予感がする

どうやら今日の私の予感は的中するようで王馬君は私に再度キスをしてきた

もう抵抗するのもアホらしい

しばらくそうさせてやるとようやく王馬君がキスを辞めた

『どう？』

『いや…どう？って聞かれても…』

感想を聞くようにこちらを見つめてきた王馬君にぶっきらぼうな返事を返す

『はぁ〜!?全くオレの気遣いを無下にするなんて…Aちゃん、ホントに人間?』

『気が遣える人間はいきなりこんなことしないと思うけど…』

そう言うと王馬君が仕方なさそうに説明してくる
腹立つ

『あのさ〜…オレは夢見がちなAちゃんの夢を壊さないよう、レモンは持ってこれなくてもコレは持ってきたよね?』

またポケットからチョコを取り出す

『……つまり？』

『つーまーりー!優しい優しいオレはチョコを何個も持ってきたってわけ！それで、ファーストキスはレモン味ならぬチョコレート味を再現しようと思ったんだけど…』

『アホなAちゃんにはわからなかったか〜』

『うるさいよ』

そう言いながら王馬君は立ち上がった

そして私の手を掴み今は使われていない3年元1組のクラスに入っていく

今は先程より、頭が痛くないからキスしようとしても全力で抵抗できるだろう

『んで、Aちゃんはあの事件、どう思う?』

一つしかない扉を塞ぐようにして王馬君は聞いてくる