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深い眠りから覚めると外はすっかり暗くなっていた。遠くから聞こえる賑やかな音も祭りの終盤に差し掛かり大いに盛り上がっていた。
普段と変わないブラウンのワンピーススカートで食堂に向かい、普段よりも物静かな雰囲気の中夕食をいただく。周りには数人しかおらず、休みの人たちは街の方へ遊びに行っているようだ。
きっとプラークもお祭りに参加し、楽しい時を過ごしているに違いない。この2日間でどんなことがあったのか後日話を聴こうと心の中に決め、黙々とご飯を平らげた。
食事を終えるとその足で王妃様の部屋に向かう。人気のない暗い廊下をひとり、コツコツと自分の靴音が寂しく響くのを感じながら進んだ。
A 「…王妃様、失礼いたします。Aでございます」
いつものように声をかけてから部屋の扉を開ける。中は暗くて静かだが、外からの光で全く見えない訳ではなかった。
裏庭に続く外扉をそっと開けると、お祭りのクライマックスに向けて大いに盛り上がる人々の音楽と歓声が王妃様の部屋の中にも広がった。
A 「王妃様、聞こえますか?街はすごく盛り上がっております。私も昨日は王子様とリトールさんとお祭りに行って参りました」
私は大きな2人掛けソファーの向かいにある椅子に腰掛け、誰もいない部屋に向かって語り始めた。
A 「街で出会った優しいお婆さんが私たち3人にそれぞれ似合ったランタンをくださったんです。勿体なかったのですが【星探しの儀式】の時に丘の上から飛ばしました。王妃様は【星探しの儀式】に参加されたことはございますか?すごく綺麗なんですよ!ランタンの灯りが空に向かってゆっくり消えていくんです。星とはまた違った美しさがあるんです」
私は止まることなく楽しかったお祭りの話を語り続ける。
楽しそうに王妃様に向かって話をする彼女の姿は、昔から全く変わっていない。おしゃべりが大好きな女の子のままだ。
幼い頃、拙い言葉で一生懸命話す私を優しい眼差しで見つめ、耳を傾け、『そうなの?すごいわね』と相槌を打ってくれた王妃様。そんな彼女からの反応は今や返ってくることはない。しかし、目の前にいるであろう王妃様はソファーに座り、こちらに笑い掛けている気がした。
A 「…来年はきっと一緒には行けないから。この思い出は私の宝物です」
霞む視界を誤魔化すように笑って見せたが、ちゃんと笑えている自信はなかった。それでも笑ってないと緊張と不安で押しつぶされそうだった。
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べーだい*メガネ(プロフ) - Da.Liさん» ありがとうございます(TT)本当に嬉しいです!頑張ります♪ (2022年11月7日 23時) (レス) id: 5d75e3e900 (このIDを非表示/違反報告)
Da.Li(プロフ) - 更新ありがとうございます!とても素敵な話で楽しませてもらっています!これからも楽しみにしています! (2022年11月7日 9時) (レス) @page32 id: 5f9bb70e19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べーだい*メガネ | 作成日時:2020年10月20日 20時