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A 「…」
カリエス 「…」
それ以上言葉を発しないカリエスだったが、その視線から本心なのだという事を嫌でも理解できた。
私はそんな緊張感に耐えられず、再び足元に目線を落とした。不自然に目を逸らした私に対して、カリエスはこちらをじっと見つめているのを肌で感じ、胸が苦しくなる。
A 「…ありがとうございます。凄く嬉しいです」
出来るだけ仕事中のような落ち着いた口調で答えた。しかし、必死に絞り出した声は少しだけ掠れていて、震えないように喉に力が入っていた。
私は心底、ここが街頭のない暗い場所で良かったと思った。カリエスの顔を見てしまったら、自分の顔を見られてしまったら、今自分が偽っている言葉も表情を全て嘘だとすぐにバレてしまう。
本当は今すぐ抱きついてしまいたい程、嬉しい。
来年も再来年も、その先もずっとカリエスと星祭りに参加したい。
もしも彼が一国の王子ではなかったのなら…。
もしも自分がメイドなどではなく、どこかの貴族令嬢だったのなら、明るい未来が待っていたのだろうか…?
そんな【たら、れば】を考えていると国王様の姿を思い出す。夢は一瞬で消え去り、現実に戻るとため息が出た。
A 「はぁ…」
カリエス 「困らせてしまったかな?」
A 「いえ、嬉しいです!そう言ってくださって、本当に嬉しいんです…」
カリエス 「そうか…?それなら良かった。俺も安心した」
柔らかく笑ったカリエスが再び夜空を見上げた。自分達が飛ばしたランタンはすっかり見えなくなっていた。
私はカリエスのその笑顔を脳裏に焼き付けるように静かに空を見上げた。
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べーだい*メガネ(プロフ) - Da.Liさん» ありがとうございます(TT)本当に嬉しいです!頑張ります♪ (2022年11月7日 23時) (レス) id: 5d75e3e900 (このIDを非表示/違反報告)
Da.Li(プロフ) - 更新ありがとうございます!とても素敵な話で楽しませてもらっています!これからも楽しみにしています! (2022年11月7日 9時) (レス) @page32 id: 5f9bb70e19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べーだい*メガネ | 作成日時:2020年10月20日 20時