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それから舞台のお稽古が本格的に始まった。
セリフや歌などは、昨年観劇したことがあったのもあり、すんなりと頭に入ったのだが、実際演じてみると上手く出来なかった。
自分でも出来ていないのが分かるし、舞台監督や演出さんからも『悪くはないんだよね』と微妙な反応が返ってくる。
雅臣 「お疲れさま。どう?お稽古、始まったんでしょ?」
『今日もダメだった…』と落ち込みながら帰宅すると、雅臣さんがリビングで私の帰りを待っていた。
いつもの優しい笑顔と声に安心し、疲れをどっと感じソファーに全体重を委ねたのだった。
A 「ただいまです。お稽古は一応やってますけど、全然思うように出来ません……」
雅臣 「そっか。他のキャストさんとかとは仲良くなった?」
A 「はい。【ばあや】役の方は休憩時間とかも私の近くにいて、いつも助けていただいています!」
雅臣 「本物のばあやみたいだね(^^)あ…ちなみに風斗は?」
雅臣さんは恐る恐る風斗くんの名前を口にすると、苦笑いを浮かべながら私の返事を待っていた。
A 「元気にしてますよ〜。っていうか、彼のエネルギーは一体どこから来ているんでしょうか。初回の読み合わせの時から完璧だったのに、ずっと悔しそうな顔をしているんです。それに比べ私はなにもかも微妙な感じで……これから歌やダンスなども本格的に合わせるのに、今の時点で追いつけてないです」
雅臣 「そうなんだ…2人とも頑張ってるんだね」
A 「いいえ、本当に私はまだまだですよ」
今日のお稽古のことを思い出し、無意識に大きなため息が出た。
雅臣 「きっとAちゃんも風斗も同じだよ。Aちゃんは自分の【ジュリエット】に納得いってないんでしょ?もしかしたら、同じように悩んでいるんじゃないかな?
風斗は元々器用だからなんでもこなせるけど、昔から悩んでる時はトコトン答えが見つかるまで探し続けて、どうしても自分だけでわからなくなった時とかは相談しに来てたから。
今はまだ探してる最中なのかもね」
思いもよらないアドバイスだったが、弟たちを見守ってきた雅臣さんが言うのだからそうなのだろう、と納得してしまった。
A 「なるほど……」
?? 「風斗くん、いつもにもなくプレッシャー感じてるように見えた」
突然後ろから聞こえてきた穏やかな声に振り返ると、柔らかい微笑みを浮かべている琉生さんが立っていた。
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春妃(プロフ) - こんなに面白い作品は久しぶりです!気づいたら一気読みしてしまいました!更新を楽しみにしてますが無理はせずに頑張ってください(* ´ ▽ ` *)応援してます! (2019年10月14日 6時) (レス) id: 37086665c7 (このIDを非表示/違反報告)
かちゅ(プロフ) - とっても面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年5月25日 13時) (レス) id: b0ebd2074b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べーだい*メガネ | 作成日時:2019年5月16日 11時