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カメラマン 「はい!じゃあ、Aちゃんが椿さんを誘惑する感じで」
A 「誘惑……」
椿 「どんと来いっ!」
楽しそうに両手を広げ私からのアクションを待ち構えている椿さんを見て、私の中で何かのスイッチが入ったのがわかった。
カメラマン 「いい感じのシーンがあったら止めるから、それまで自由に動いていいよ」
A 「はい」
私はお腹に抱えていたクッションを空いているスペースに置くと、椿さんの方へ向き直った。
とりあえずそのままゆっくり顔を近づけると、その分だけ椿さんが後ろにさがった。
椿 「え、なに??」
A 「……」
私が出来る精一杯の上目遣いで甘えるように近づくと、ついに椿さんはソファーの肘掛けによって後退出来なくなった。
椿 「……A?」
側から見ればきっと誘惑しているというよりも、Sっ気のある彼女が彼氏に迫っている図にしか見えないだろう。
私は椿さんを逃さないようにじっと見つめ、さらに出来るだけソファーの端へと追いつめた。
ついには椿さんが仰け反るレベルになり、私は椿さんに覆い被さるような姿勢になっていた。
カメラマン 「いい感じだね!そしたら椿さんはそのままで、Aちゃんがもう少しこっちに身体ねじって……そう!キツイと思うけどそのままで」
私たちがどんなことをするかずっと見守っていたカメラマンがインスピレーションが湧いたのか、色んな指示を出し始めた。
私はぷるぷるとしそうな腕と脚を必死に耐え、表情は出来るだけ柔らかく誘うように意識を集中させた。
カメラマン 「はい、OKです!お疲れ様でした〜」
その言葉を合図に、私は崩れるように身体から力を抜いた。
椿 「お疲れ、身体大丈夫?俺から見てもめちゃくちゃ辛そうな角度だったけど……」
A 「なんとか……」
椿 「てか、急に近づいて来るからビックリしたんですけど!こーゆー撮影は初めてだからよく分かんねーし。Aもなんかいつもと違って色気あるっつーか……」
椿さんはだんだん声が小さくなり、最後まで聴き取ることが出来なかった。
おそらく自分が疲れていて耳が遠くなっているのもあるだろうが。
椿 「っ、なんでもない!ほら、休憩時間。次は梓との撮影だろ!俺、横から見学してよっかなぁ〜〜」
A 「見なくていいですよ!」
椿 「ケチ〜」
いつもの笑顔で冗談を言ってくれる椿さんを見て、少しだけ『やり過ぎた』と反省していた私の気が晴れた気がした。
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春妃(プロフ) - こんなに面白い作品は久しぶりです!気づいたら一気読みしてしまいました!更新を楽しみにしてますが無理はせずに頑張ってください(* ´ ▽ ` *)応援してます! (2019年10月14日 6時) (レス) id: 37086665c7 (このIDを非表示/違反報告)
かちゅ(プロフ) - とっても面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年5月25日 13時) (レス) id: b0ebd2074b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べーだい*メガネ | 作成日時:2019年5月16日 11時