新しい道が開くとき5【BROTHERS CONFLICT】【フォルティッシモ 】

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椿 「Aは知ってると思うけどさ、数年前俺が出たかったアニメの主役オーディション。俺じゃなくて、敵役でオーディション受けてた梓が選ばれたって話…その後どうなったかも知ってるでしょ？」


そこまで言うと私の顔をチラッと確認し、私が真剣に聞いているのが分かると再び話し始めた。


椿 「あの時『俺も頑張ってきたのになぁ』って悔しかったし、少しだけでも自信を持ってた自分が恥ずかしくなった。
今でも当時のことを思い出すと苦しい気持ちになるけど、でもあの事があったから今頑張って続けられてると思う」


そして『まぁ、なんとかなるよ！』といつもの椿さんに戻った。


椿 「Aが今までレッスンしてきて、最初より成長している事は確かでしょ？俺は分からないけど！」

A 「テキトーな励まし、ありがとうございます(苦笑)」


私は不貞腐れたような返事をしたが、椿さんのそのテキトーな言い方が私の気持ちを軽くさせた。


A 「何だかんだ言ってても仕方ない。頑張るしかないですね！」

椿 「そうそう！なんかあったら【椿お兄ちゃん】に相談しなさい！」


椿さんはいつも私に【椿お兄ちゃん】と言わせようとするのだが、今日だけは言ってもいいと思ってしまった。


A 「頼りにしてます。【椿お兄ちゃん】」


私はそれだけ言って立ち上がり、飲み物をとりにキッチンへ向かうと、遠くから聞こえる『うひょ〜〜！！！ヤベェ。ちょーかーいー』と雄叫びを上げる椿さんの声に小さく吹き出してしまった。

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