隆平side ページ10
移動なんてしてへんはずやのに、
手を付いた床からは、木の温もりが失われ、
人工的な、冷たい感触になっているのに気が付いた。
それに加えて、
腕には、針が刺さってて…。
その管を辿って、見上げてみれば、
点滴台にぶら下がった、点滴袋に繋がっていた。
床の冷たさと、
点滴と、
下っ腹が痛む、この感覚。
止まらない震え。
ここは、
あの日の、病院の廊下や。
点滴台にしがみつき、やっとのことで病室から出てきたところ。
この後、我慢できんで漏らしてしまうんや…。
また同じ思いをするかもしれへんっていう不安が、
僕の意識を、あの時に、引きずり戻したんかな。
これが現実やないってことは、分かる。
今、僕が直面している、不安と、恐怖と、惨めさと、痛みが、
忘れようと、必死に背を向けていた過去と、重なってしもたんや。
こんな幻覚まで見てまうほどに…。
更に、目の前には、
多くの『白衣の天使』が、並び、
僕を見下ろして、笑う。
差し伸べられる手なんか、ない。
別に期待も、してへん。
けど、
助けてくれへんのやったら、
どっかに消えてほしい。
せめて、一人にさせて…。
「…るちゃん、まるちゃん！」
痛みに、目を瞑ると、
か細い、女の子の声が、耳に入ってきた。
気付けば、
冷たい廊下も、
点滴も、ナースも、
消えていたけど、
体のしんどさだけは、
僕にしがみついて、離れへん。
「歩行器、タイヤ動かなくて…」
目の前にあったんは、
蜜柑の顔。
幻覚の中のナースと違って、
目線を合わせてくれている。
僕が意識を遠のかせている間に、
歩行器を持ってきてくれようとしたん？
大嫌いな、僕のために？
その優しさと、
動かなくなった歩行器の姿に、
また、涙が落ちる。
揺れる視界に映されたんは、
この歩行器と出会った時の場面。
メンバーが僕のために用意してくれた、オレンジ色の歩行器は、
亮ちゃんの笑顔と一緒に迎えてくれた。
最初は怖くて、
身を移すことができひんかった僕。
でも、U字になったアームの部分が、
両手を広げた、
仲間の姿に、見えたんや。
大丈夫やからって…
支えたるからって…
そんな言葉を、かけられているようやった。
お陰で僕は、踏み出すことができて、
歩行器を足として、迎え入れることができたんや。
それなんに…。
みんな。
みんなに、与えてもろた『足』
ひどい目に遭わせてしもた。
傷つけて、しもたよ…。
ごめんな…。
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太陽丸(プロフ) - 凪沙さん» 凪沙さん！ありがとうございます★そんなこと言って頂けるなんて嬉しいです！終わりは自分でもまだ見えません…が、変わらずお付き合いいただけたら嬉しいなと思います！ (2018年7月17日 15時) (
レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - 突然失礼します。いつも更新楽しみにしてます。マルちゃんが助かりますように,と思いながら読ませてもらっています。マルちゃんを幸せにしてほしいっていう気持ちがあるけれどもっと太陽丸さんの小説を読みたいなとも思います。更新頑張ってください！ (2018年7月16日 8時) (レス) id: b3cf2c91ae (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - 詩暖さん» うわ〜！一気にとは！大変だったでしょう:(T-T):大切な時間を割いてお読み頂いて本当にありがとうございます(*^-^*)しんどいシーンも多いですが、これからも見守って頂けたら嬉しいですｏ(＾-＾)ｏ (2018年7月5日 20時) (レス) id: cfb77a5e73 (このIDを非表示/違反報告)
詩暖(プロフ) - 初めまして。この間、ようやく『逆光』シリーズを読み始めました……一気に読んだのですが、もうマルちゃんが救われますように……と祈るばかりです。すごく引き込まれます。これからの展開、楽しみです。無理なく更新してください。 (2018年7月5日 18時) (レス) id: 4736f0cf92 (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - ひなばるさん» ありがとうございます！回りくどくて情報過多で、分かりづらくないかなあと不安になっていたので、楽しみにしてくださると言っていただき、とても励みになります！これまでも酷な出来事がいっぱい起きてきていますが、どうか最後まで見守っていただけたらと思います (2018年7月1日 8時) (レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：太陽丸 | 作成日時：2018年6月19日 14時
