隆平side ページ49
日常から切り離された、殺風景な空間で、
白いベッドに縛り付けられ、
白い天井を見上げる生活の中、
何度も視界に映される、白衣。
それを身にまとった、この女性たちは、
白衣の天使と呼ばれる。
でも、
ごめんなさい…。
僕には、
どの白衣にも、悪魔が潜んでいるように、見えてならない。
運びこまれた救急病院。
ここで働く、多くの看護師さんたちは、
皆、あの人と同じ格好をしている。
同じ職業なんやから、当たり前やんな。
あの人やない。
あの人やないのに、
怖くて、たまらんかった。
隆「っ痛っ！…」
人の手で、仰向けから、横向き体勢に持っていかれる途中、
走った痛みに、情けない悲鳴を上げてしまった。
肋骨と、右腕が折れ、
右肩も脱臼している今の僕は、
自力で寝返りを打つことのできひん、あの手術直後の日々のように、
こうして、看護師さんの体位交換に頼るしかなかった。
隆「すみません、騒いで…」
その動きが終わるたび、僕は申し訳なさと恐怖に支配されるんや。
こんな態度見せたら…また何かされるかもしれへん…。
「大丈夫ですよ。少し痛み止め入れましょうか？」
体位交換のために来てくれた、夜勤のナースは、
寄り添うように、声をかけてくれる。
優しいな。
でも…
これが続けば、うんざりさせてしまうんかな。
機嫌を、損ねないようにせな。
この優しさが、途切れてしまわへんように、
僕は、
余計な仕事を増やさへん患者で、おらなあかん。
なのに…
体を動かすと、激痛やし、
表情にも、声にも、そのしんどさが出てきてしまう。
「いつでもナースコールしてくださって大丈夫ですからね」
我慢しようという思いを見透かしたように、心優しい看護師さんは、そんな言葉を残していってくれた。
ナース服が、視界から去り、脱力すると、
今度は、目の前に火が押し寄せてきた。
バチバチって音と、
熱風まで、生まれる。
白かった病室は、いつの間にか赤い炎と黒い煙に、すっかり覆い隠されてしもた。
あの時の光景が、
こんな静かな場所で、
僕の幻覚の中で、
再現されたかのように、
リアルに繰り広げられている。
隆「嫌…嫌や…」
火災の日から数えて、３度目の夜。
皆の前では、大丈夫やって笑ってるけど、
僕はもう、限界やった。
誰に何を傷つけられたわけでもないんに、
日々の消化が、まるで熱湯を飲まされ続けているようで…。
アカンのに。
こんな落ちてちゃ、アカンのに…。
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太陽丸(プロフ) - 凪沙さん» 凪沙さん！ありがとうございます★そんなこと言って頂けるなんて嬉しいです！終わりは自分でもまだ見えません…が、変わらずお付き合いいただけたら嬉しいなと思います！ (2018年7月17日 15時) (
レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - 突然失礼します。いつも更新楽しみにしてます。マルちゃんが助かりますように,と思いながら読ませてもらっています。マルちゃんを幸せにしてほしいっていう気持ちがあるけれどもっと太陽丸さんの小説を読みたいなとも思います。更新頑張ってください！ (2018年7月16日 8時) (レス) id: b3cf2c91ae (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - 詩暖さん» うわ〜！一気にとは！大変だったでしょう:(T-T):大切な時間を割いてお読み頂いて本当にありがとうございます(*^-^*)しんどいシーンも多いですが、これからも見守って頂けたら嬉しいですｏ(＾-＾)ｏ (2018年7月5日 20時) (レス) id: cfb77a5e73 (このIDを非表示/違反報告)
詩暖(プロフ) - 初めまして。この間、ようやく『逆光』シリーズを読み始めました……一気に読んだのですが、もうマルちゃんが救われますように……と祈るばかりです。すごく引き込まれます。これからの展開、楽しみです。無理なく更新してください。 (2018年7月5日 18時) (レス) id: 4736f0cf92 (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - ひなばるさん» ありがとうございます！回りくどくて情報過多で、分かりづらくないかなあと不安になっていたので、楽しみにしてくださると言っていただき、とても励みになります！これまでも酷な出来事がいっぱい起きてきていますが、どうか最後まで見守っていただけたらと思います (2018年7月1日 8時) (レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：太陽丸 | 作成日時：2018年6月19日 14時
