水坂side ページ46
丸山さんから、自由を奪い去った僕は、
西野さんに、警察に通報したと嘘をつき、
一緒に敷地内を捜索した時も、現場にだけは近づくことがないよう、誘導した。
やがて、警察から『危険だから、捜索は警察に任せて、待機するようにとの、忠告を受けた』と、
新たな嘘を重ね、
西野さんは、素直に小屋の中にこもり続けた。
警察が必死の捜索をしていることを、
健気に、信じて…。
ただただ、丸山さんの無事を祈って。
す「で、マルは…あの場所にブっこんだまま、ほったらかしやったんか？」
口調こそ冷静ではあるものの、
今にも胸倉を掴んできそうな迫力を持った、渋谷さんの目。
僕は、そんな彼から視線を反らして、首を振った。
「あの時、僕は産まれて初めて、姉に頼み事をしました。数時間に一回でいいから、彼に休憩を与えてほしいと。意外にもあっさりと、それは了承してくれました。姉の目的はあくまで西野さんなので、彼に対しては、多少の同情があったのかもしれません。…だから僕は、その時間に彼の元に向かい、食事や飲み物を用意したり、お手洗いに連れて行ったりしました…」
曲がりなりにも10年以上、ヘルパーとして、様々な障害を持った人たちに携わってきた僕。
自力での移動が難しい人にとって、
車椅子や歩行器、手すりなどの補助具を奪うなんて行為、
手足を切断されたのと同じようなものであることは、
職業上、それをよく理解している。
人の支えになるべき立場の僕が、
なぜ、こんな残忍なことをしているのか、と、
自分に疑問を投げかけながらも、
やめることは、できなかった。
手すりを切り落としていた時、
見ないようにしていた、丸山さんの表情を、つい一瞬、視界に入れてしまった。
その時の、深く傷ついたまなざしは、
僕の心をえぐり殺した。
丸山さんは、僕を信じてくれていたから、
何度も、ありがとうって言ってくれたから、
だからこそ、余計に、つらかった。
でも、
こうなってしまった今、
たとえ、あの時に、何度時間が戻ったとしても、
僕は、同じことを繰り返すだけだろう。
最初に、姉の計画を聞いた時、
内臓までもが、鳥肌を立てたような感覚だった。
心は、拒絶した。
何の迷いもなく、拒絶した。
でも…
僕に、
姉の指示に背を向けるという選択肢は、ない。
あってはいけない。
休憩時間の提案は、せめてもの、償い。
僕にできるのは、ここまでだった…。
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太陽丸(プロフ) - 凪沙さん» 凪沙さん！ありがとうございます★そんなこと言って頂けるなんて嬉しいです！終わりは自分でもまだ見えません…が、変わらずお付き合いいただけたら嬉しいなと思います！ (2018年7月17日 15時) (
レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - 突然失礼します。いつも更新楽しみにしてます。マルちゃんが助かりますように,と思いながら読ませてもらっています。マルちゃんを幸せにしてほしいっていう気持ちがあるけれどもっと太陽丸さんの小説を読みたいなとも思います。更新頑張ってください！ (2018年7月16日 8時) (レス) id: b3cf2c91ae (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - 詩暖さん» うわ〜！一気にとは！大変だったでしょう:(T-T):大切な時間を割いてお読み頂いて本当にありがとうございます(*^-^*)しんどいシーンも多いですが、これからも見守って頂けたら嬉しいですｏ(＾-＾)ｏ (2018年7月5日 20時) (レス) id: cfb77a5e73 (このIDを非表示/違反報告)
詩暖(プロフ) - 初めまして。この間、ようやく『逆光』シリーズを読み始めました……一気に読んだのですが、もうマルちゃんが救われますように……と祈るばかりです。すごく引き込まれます。これからの展開、楽しみです。無理なく更新してください。 (2018年7月5日 18時) (レス) id: 4736f0cf92 (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - ひなばるさん» ありがとうございます！回りくどくて情報過多で、分かりづらくないかなあと不安になっていたので、楽しみにしてくださると言っていただき、とても励みになります！これまでも酷な出来事がいっぱい起きてきていますが、どうか最後まで見守っていただけたらと思います (2018年7月1日 8時) (レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：太陽丸 | 作成日時：2018年6月19日 14時
