隆平side ページ5
「蜜柑、見せてやんなよ」
苺が突然、
後ろの方に立っている蜜柑の服を、
引っ張ったかと思ったら、
半ば無理やり、
彼女が着ている、薄橙のシャツの袖を、
肘まで、引きずりあげた。
隆「…！？」
現れたものを見て、言葉を失った。
白い、華奢な、その手首に、
無数の傷痕が、飛び交っていたから…。
「蜜柑は、つらいことがあると、あなたの姿を見て、あなたの声や歌を聞いて、それで踏ん張ってきたの！それがなくなったから、自分を傷つけて、痛みを感じて、血を流して…そうすることでしか、精神を保てなくなったのよ」
ずっと、見ないようにしてきた、
ファンの絶望が、突き付けられる。
どことなく明里ちゃんにも似ている、清楚で、か弱そうな、蜜柑。
僕が、この子を傷だらけにしてしもたん？
「私だったら、もしそんな形でヒナちゃんがいなくなっちゃったとしたら、手首切るどころじゃないよ。もう死んでる」
恐らく引きつっている、僕の表情を確認した後、
葡萄は、こう続けた。
「実際いると思う。自分で命を絶った、マルターも」
命を絶った、
マルター？
「この人殺し」
苺は、
僕が寄りかかっている壁に、
激しい音と振動を生みながら、
片足の裏を激突させた。
顔のすぐ横には、鮮やかな赤のパンプス。
大好きな、渋やんの色やのに、
血で染められたようにしか、見えなくなっていた。
僕は…
この色の液体を、
僕を想い続けてくれた人たちに、
流させたかもしれへんってこと？
…少なくとも、目の前におるこの子は、
何度も、
僕に血を奪われたんや。
この傷は、
僕のせいで、生まれた。
そして、
どこかには、
僕のせいで…
消された命も？
悲劇の一言では、済まされへん妄想が、
進んで、進んで…
止まってくれへん。
気が付けば、僕の頬には、
熱い粒が、伝っていた。
「あ…」
それに気づいた蜜柑が、袖を元の位置に戻す。
「反省してるなら、いいんだよ…ね？蜜柑」
少しして、檸檬の遠慮がちな確認が聞こえる。
それに続き、蜜柑の、小さなうなずきの声も…。
もうこれ以上、責められたくない。
でも、
許しを乞う資格なんて、
僕には、ないような気がした。
「女に泣かされるとか、ウケる」
和泉が、満足げに笑い出す。
僕のカッコ悪く惨めな姿を、
目の当たりにして、
さぞかし、愉快なんやろう。
ええよもう…。
笑えば、ええ。
もう僕の心は、
満遍なく、
無数の傷で覆われていた。
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太陽丸(プロフ) - 凪沙さん» 凪沙さん！ありがとうございます★そんなこと言って頂けるなんて嬉しいです！終わりは自分でもまだ見えません…が、変わらずお付き合いいただけたら嬉しいなと思います！ (2018年7月17日 15時) (
レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - 突然失礼します。いつも更新楽しみにしてます。マルちゃんが助かりますように,と思いながら読ませてもらっています。マルちゃんを幸せにしてほしいっていう気持ちがあるけれどもっと太陽丸さんの小説を読みたいなとも思います。更新頑張ってください！ (2018年7月16日 8時) (レス) id: b3cf2c91ae (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - 詩暖さん» うわ〜！一気にとは！大変だったでしょう:(T-T):大切な時間を割いてお読み頂いて本当にありがとうございます(*^-^*)しんどいシーンも多いですが、これからも見守って頂けたら嬉しいですｏ(＾-＾)ｏ (2018年7月5日 20時) (レス) id: cfb77a5e73 (このIDを非表示/違反報告)
詩暖(プロフ) - 初めまして。この間、ようやく『逆光』シリーズを読み始めました……一気に読んだのですが、もうマルちゃんが救われますように……と祈るばかりです。すごく引き込まれます。これからの展開、楽しみです。無理なく更新してください。 (2018年7月5日 18時) (レス) id: 4736f0cf92 (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - ひなばるさん» ありがとうございます！回りくどくて情報過多で、分かりづらくないかなあと不安になっていたので、楽しみにしてくださると言っていただき、とても励みになります！これまでも酷な出来事がいっぱい起きてきていますが、どうか最後まで見守っていただけたらと思います (2018年7月1日 8時) (レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：太陽丸 | 作成日時：2018年6月19日 14時
