あなたside ページ38
隆平さんが、救出された。
でも、
駈け寄った私は、
その状態が認識できる位置まで来ると、
もうそれ以上は、進めなくなってしまった。
ススにまみれた顔。
焼け裂かれた服。
そこから見える腕には、ひどい火傷の跡。
頭から流れる赤い液体。
そんな体を横たえて、
目も開けられないでいる隆平さんは、
腕に触れられると、もがくようなうめき声を上げていた。
渋谷さんも、安田さんも、大倉さんも、
そんな隆平さんのそばについて、励ましているようだったけれど、
私の足だけは、後ずさっていいき、
気付けば、野次馬と同じくらいの位置まで引き返していた。
あれほど、会いたいと願い続けていた、隆平さんなのに、
彼が直面した悲惨さを目の当りにしたら、
見ていられなくなって…
結局、
声すら掛けることができないまま、
隆平さんは、救急車に乗せられ、去ってしまった。
火災も鎮火し、
野次馬たちは、徐々に減っていく。
煙に汚れた夜空には、
星ひとつ、輝いていない。
晴れていたのに…。
お月様も、
かき消されていた。
優しく光を放つ、お月様は、
隆平さんのようだと、私は感じていた。
表面上は、太陽のイメージが強いけれど、
私は、お月様のほうが、隆平さんの象徴として、しっくり来ていた。
だから今、
立ち昇る、有害な煙に隠されたお月様が、
悪意ある人間たちに、自由を奪われ、カンキンされ続けた、隆平さんと重なってしまう。
この煙を追い払えるのは、いつ？
お月様が、再び、優しい光を見せてくれるのは、いつ？
深い傷を負ったであろう、隆平さんの心や体から、
痛みが去ってくれるのは、いつなんだろう。
命があっただけで、感謝しなければいけない状況。
それは分かっている。
でも私は、嫌な予感がしていた。
この事故が、
また、幸せで穏やかな日々を、
壊してしまうんじゃないかって…。
章「マルもヨコちょも落ち着いたみたいやで」
一人、私を心配して残ってくれた安田さんが、スマホを手に、フワフワした笑顔を見せてきた。
その背景に残るのは、途方もない、燃えカスの山。
何て不自然な組み合わせだろう。
明里「そう…」
私は笑みもなくそう返し、
再び、悲惨な現場跡を目に映した。
隆平さん、いつからここに閉じ込められていたの？
何をされたの？
助けてって…。
涙を流していたのかな。
ごめんね。。
こんな近くにいたのに、
助けられなくて、
本当に、ごめんなさい…。
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太陽丸(プロフ) - 凪沙さん» 凪沙さん！ありがとうございます★そんなこと言って頂けるなんて嬉しいです！終わりは自分でもまだ見えません…が、変わらずお付き合いいただけたら嬉しいなと思います！ (2018年7月17日 15時) (
レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - 突然失礼します。いつも更新楽しみにしてます。マルちゃんが助かりますように,と思いながら読ませてもらっています。マルちゃんを幸せにしてほしいっていう気持ちがあるけれどもっと太陽丸さんの小説を読みたいなとも思います。更新頑張ってください！ (2018年7月16日 8時) (レス) id: b3cf2c91ae (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - 詩暖さん» うわ〜！一気にとは！大変だったでしょう:(T-T):大切な時間を割いてお読み頂いて本当にありがとうございます(*^-^*)しんどいシーンも多いですが、これからも見守って頂けたら嬉しいですｏ(＾-＾)ｏ (2018年7月5日 20時) (レス) id: cfb77a5e73 (このIDを非表示/違反報告)
詩暖(プロフ) - 初めまして。この間、ようやく『逆光』シリーズを読み始めました……一気に読んだのですが、もうマルちゃんが救われますように……と祈るばかりです。すごく引き込まれます。これからの展開、楽しみです。無理なく更新してください。 (2018年7月5日 18時) (レス) id: 4736f0cf92 (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - ひなばるさん» ありがとうございます！回りくどくて情報過多で、分かりづらくないかなあと不安になっていたので、楽しみにしてくださると言っていただき、とても励みになります！これまでも酷な出来事がいっぱい起きてきていますが、どうか最後まで見守っていただけたらと思います (2018年7月1日 8時) (レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：太陽丸 | 作成日時：2018年6月19日 14時
