信五side ページ23
飛び込んだはええけど、
充満する黒い煙は、思った以上に強烈やった。
視界を塞がれる以前に、
刺激が強くて、目も開けてられへん。
ここから、
ほんの数歩進めば、マルがおるかもしれへんのに。
そう思うと、役立たずの視覚が、心底憎らしく、
もどかしかった。
四つん這いになって、
タオルで口押さえてるから、声も出せへんし。
もう、勘しかない。
すばるがかぶせてくれた水も、すでに蒸発してしもた感じやし、
一瞬も、立ち止まってる暇はない。
幸い、こっちにはまだ、火はそれほど燃え広がってないようにも感じるけど、
それも時間の問題やろう。
声も視覚も封じられた俺は、
自由が残された手で作った拳を、思い切り振り落とし、
存在を知らせるため、這いつくばった床を、ひたすら殴った。
マル、気付いてくれ！
何とかここまで、這ってきてくれ！
やけくそ気味に、その行為を繰り返していると、
ついに、待ち望んでいた感触を、俺の腕が捉えた。
人の手や！
両手でしっかり、掴んできてる。
俺は、
その手の主を、引きずるようにして、
黒煙をまとったまま、
どうにかこうにか、外に這い出した。
「ヒナ！？」
高温の、黒い世界から抜け、地面に突っ伏すと、
炎のバチバチという音に混じって、
すばるらしき声が、俺の耳に触れた。
まだ目は開けられへんけど、
すばるが、コテージから俺を遠ざけるため、
引きずっていってくれたんは、分かった。
す「ヒナ大丈夫か？」
信「ゲホッ…まる、まるは…」
す「…きっと…ヨコが助けてくれる」
少し悔しさの混じった、すばるの冷静な声で、
理解した。
俺を掴んできたあの手は、
マルのものやなかったんや。
す「けど、女の子二人、救出できたで！」
ああ…
マルに野次を飛ばした…。
す「ヒナ」
信「…マル、ごめん…」
目の痛みが和らいでも、
開けることができひんかった。
俺が、闇雲に進んでいた方向が、
マルのおる方やったら、
今頃…。
マルは、俺たちの元に…。
す「あ！もう一人、女の子！」
どうやら、
もう一人の野次女が、脱出してきたらしい。
「まるちゃんと、友達っ！窓入っゲホゲホ！…突き当りまでまっすぐ…ゴホッ！！」
その命からがら逃れてきた子が、
マルたちの居場所を伝えてくれている様子。
まっすぐか。
俺は確か、
左側に向かっていった気がする。
あの時の、俺の判断が、
マルの命を、
失わせてしまうかもしれへんのか…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 88人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
太陽丸(プロフ) - 凪沙さん» 凪沙さん！ありがとうございます★そんなこと言って頂けるなんて嬉しいです！終わりは自分でもまだ見えません…が、変わらずお付き合いいただけたら嬉しいなと思います！ (2018年7月17日 15時) (
レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - 突然失礼します。いつも更新楽しみにしてます。マルちゃんが助かりますように,と思いながら読ませてもらっています。マルちゃんを幸せにしてほしいっていう気持ちがあるけれどもっと太陽丸さんの小説を読みたいなとも思います。更新頑張ってください！ (2018年7月16日 8時) (レス) id: b3cf2c91ae (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - 詩暖さん» うわ〜！一気にとは！大変だったでしょう:(T-T):大切な時間を割いてお読み頂いて本当にありがとうございます(*^-^*)しんどいシーンも多いですが、これからも見守って頂けたら嬉しいですｏ(＾-＾)ｏ (2018年7月5日 20時) (レス) id: cfb77a5e73 (このIDを非表示/違反報告)
詩暖(プロフ) - 初めまして。この間、ようやく『逆光』シリーズを読み始めました……一気に読んだのですが、もうマルちゃんが救われますように……と祈るばかりです。すごく引き込まれます。これからの展開、楽しみです。無理なく更新してください。 (2018年7月5日 18時) (レス) id: 4736f0cf92 (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - ひなばるさん» ありがとうございます！回りくどくて情報過多で、分かりづらくないかなあと不安になっていたので、楽しみにしてくださると言っていただき、とても励みになります！これまでも酷な出来事がいっぱい起きてきていますが、どうか最後まで見守っていただけたらと思います (2018年7月1日 8時) (レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：太陽丸 | 作成日時：2018年6月19日 14時
