隆平side ページ20
火だるまになりかけとった女の子は、
あの日の歌番組で、地獄の時間を生んだ、張本人。
でも、
全身で訴えてくるヘルプを、目の当たりにして、
それが誰なのか次第で、行動を選ぶんは、
どうしても、できひんかった。
せやから、火にまみれた葡萄が、走り回り、
僕のそばに来た時、
咄嗟に腕を伸ばして、
上着を剥ぎ取っていたんや。
途端に、腕に激痛が走り、
僕は、思わず悲鳴を上げた…
つもりやった。
実際は、声を出すこともできてへんかったんやけど…。
火傷のせいか、負傷してる肩を急激に動かしたせいか、
とにかくそれは、気を失いそうな痛みで、
心配する蜜柑の、泣きそうな表情を見て、
僕は、よほどひどい顔をしてるんやと、理解した。
ごめんな。
自分が応援してきたアイドルの、
無様な姿ばかり、見せてしもて…。
「バカ野郎！！どこ投げてんだ！」
喉が千切れんばかりに怒鳴る佐々屋。
僕が、葡萄の上着を、この場に投げ捨てたせいで、
僕らのおる部屋にも、火元が生まれてしもたんや。
キッチン側からも、火はどんどん侵入してくるし、
煙も発生して、
やがて、苺が、激しく咳き込んだ。
これは…アカンっ！
隆「吸ったら危険やっ！頭低くして、服でも何でもええから口塞いで！」
直前まで、痛みの悲鳴すらあげられへんかったんに、
僕は叫んでいた。
火事の煙は有害ガスや。
体勢を低くするだけでも、生存率は変わるて、
朦朧とする思考回路の中から呼び出した防御法を、
危機に瀕したこの人らに、伝えなって、
その一心やった。
ただ、
勢いよく声を発した反動で、僕は煙を吸い込んでしもて…。
「まるちゃん！」
オレンジ色のカーディガンが口に当てられた。
何か…
今にも、僕らを焼き消そうとしている、この悪魔の色と、よう似ている…。
そっか。
僕は火の色なんか。
確かにそうや。
みんなの時間や労力、心、
いっぱい、焼いて消してしもたからな。
火も煙も勢力を増していくんに、
僕は、ボンヤリと呑気に、そんなことを思っては、
自分を嘲笑していた。
僕が、大切な人のそばで生きるいうんは、
その人たちの、大切なものを、
燃やし続け、消失させていくって、
そういうことなんかも、しれへんな…。
でも、結局それが最後には、自分に跳ね返ってきて、
今こうして、
僕自身が、焼き尽くそうとされている。
ワガママやと思うけど、
せめて…
みんなに見送られたかった…。
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太陽丸(プロフ) - 凪沙さん» 凪沙さん！ありがとうございます★そんなこと言って頂けるなんて嬉しいです！終わりは自分でもまだ見えません…が、変わらずお付き合いいただけたら嬉しいなと思います！ (2018年7月17日 15時) (
レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
凪沙(プロフ) - 突然失礼します。いつも更新楽しみにしてます。マルちゃんが助かりますように,と思いながら読ませてもらっています。マルちゃんを幸せにしてほしいっていう気持ちがあるけれどもっと太陽丸さんの小説を読みたいなとも思います。更新頑張ってください！ (2018年7月16日 8時) (レス) id: b3cf2c91ae (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - 詩暖さん» うわ〜！一気にとは！大変だったでしょう:(T-T):大切な時間を割いてお読み頂いて本当にありがとうございます(*^-^*)しんどいシーンも多いですが、これからも見守って頂けたら嬉しいですｏ(＾-＾)ｏ (2018年7月5日 20時) (レス) id: cfb77a5e73 (このIDを非表示/違反報告)
詩暖(プロフ) - 初めまして。この間、ようやく『逆光』シリーズを読み始めました……一気に読んだのですが、もうマルちゃんが救われますように……と祈るばかりです。すごく引き込まれます。これからの展開、楽しみです。無理なく更新してください。 (2018年7月5日 18時) (レス) id: 4736f0cf92 (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - ひなばるさん» ありがとうございます！回りくどくて情報過多で、分かりづらくないかなあと不安になっていたので、楽しみにしてくださると言っていただき、とても励みになります！これまでも酷な出来事がいっぱい起きてきていますが、どうか最後まで見守っていただけたらと思います (2018年7月1日 8時) (レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：太陽丸 | 作成日時：2018年6月19日 14時
