あなたside ページ24
裕「まる！どしてん！」
隆平さんは、目を見開いて、
平野さんと由奈ちゃんの間あたりに、
震えた指先を、向けている。
今にも悲鳴を上げそうな表情なのに、
隆平さんは、口をパクパクさせたまま、
声も出せなくなっていた。
章「？何も、ないで？」
私たちの視界にも、
振り返り、隆平さんが指す場所を確認した、由奈ちゃんたちの視界にも、
他の車が駐車されている景色と、
その奥に佇む、白い建物が、静かに映っているだけ。
幻覚。
それは、言葉に出さずとも、きっとみんな、理解していた。
昨夜は、
曽根さんが来ると言いながら、怯えていたという隆平さん。
きっと今、
隆平さんの瞳には、
あの冷たい笑みが、貼り付いて、取れないんだ…。
裕「ヤスちょっとこれ」
横山さんは、持っていた荷物を安田さんに託すと、すぐに車の鍵を開け、
後部座席の、スライドドアを滑らせた。
すでに助手席は、いっぱいいっぱいまで前に詰められていて、
その後ろには、広々としたスペースが用意されていた。
横山さんは、声をかけることもなく、腰を落とすと、
車椅子から、隆平さんを抱き上げて、
強引とも言えるスピードで、
その体を、車の中に押し込んだ。
一刻も早く、ここから遠ざけてあげたかったんだろうな…。
隆平さん…。
大丈夫。
帰れるから。
みんな、そばにいるから。
車の中でも、
「追ってくる…追いかけてくる」って、
背中を丸め、顔を覆い、
隣りの安田さんに支えてもらいながら、
隆平さんは、震えていた。
章「まる、これから信ちゃん家に帰るからな。渋やんと亮も、仕事終わって、来てると思うから。あ、せや、今日はお寿司とる言うてたよ！退院祝いやで」
安田さんが、今から待っている楽しみを隆平さんに、一生懸命伝えるけれど、
そんなの、耳にも入っていない様子の隆平さん。
ただただ、彼の中で追いかけてくる悪魔を、
追い払うように、首を強く振っている。
かわいそうに。
もう、ここは病院じゃない。
あの人も、いないのに…。
明里「隆平さん、大丈夫だよ」
たまらず声をかけたけれど、
隆平さんにとっては、大丈夫じゃないことくらい、分かっている。
でも他に何て言えばいいのか、言葉が見つからなくて。
村上さんの家に着けば、
落ち着くだろうか。
今はとにかく、早く、この幻覚から隆平さんを助け出してあげたい。
これ以上、隆平さんを、
怖がらせないで…。
見えない悪魔に、私はそう懇願した。
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INFINITY(プロフ) - いつも楽しみに見せていただいてます。閲覧希望よろしくお願いします！ (2019年5月20日 1時) (
レス) id: 8ddd0f17c0 (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - まとめてしまって申し訳ありません。こちらのページから友達申請をして頂けますでしょうか？→https://commu.nosv.org/bbs/bebe0725 (2019年5月19日 7時) (レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
カナマル - 閲覧希望します！ (2019年5月18日 22時) (レス) id: cf75a14418 (このIDを非表示/違反報告)
すずまる(プロフ) - 閲覧希望です (2019年5月18日 9時) (レス) id: e1b3b87754 (このIDを非表示/違反報告)
あすか - はじめまして いつも楽しみにしております 閲覧希望です 宜しくお願いします (2019年5月18日 4時) (携帯から) (レス) id: c42cace51b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：太陽丸 | 作成日時：2019年3月24日 7時
