隆平side ページ12
一瞬で、
僕の全身に、水を羽織らせた悪魔。
振り返らなくても、分かる。
あの時と、同じ…。
「曽根さん！」
由奈ちゃんが立ち上がり、
信じられないといった様子で、声を荒げたけれど、
すべてを思い出した僕には、
驚きなんか、湧かなかった。
水を含んだ分以上に、
ズシンと、体が重くなって、
力が失われていくのを感じる。
「隠してあげようと思って」
いつかも聞いた、
この恩着せがましい台詞。
隠すって何？
廊下を通り過ぎる患者も、面会人も、
この時間はもう、
一人も、おらへんよ？
「思い出したみたいね」
詰まった耳に、くぐもって聞こえたその声に、
恐怖を通り越して、
僕は、笑っていた。
静かに、笑っていた。
「悪く思わないでね。同じシチュエーションにしてあげれば、思い出すでしょう？記憶を取り戻すお手伝いをしただけよ」
理解した。
この人は、意図的にこの状況を作り上げたんや。
「というか、本当にあなたって素直ね。面白いくらいに、台本通りに動いてくれて。1ナースが言っただけのことを真に受けて、無茶なリハビリも馬鹿みたいに、寝ないでやって。そんなの逆効果に決まってるじゃないの」
唾でも吐きかけてくるような、嘲笑たっぷりの声。
僕は、
治らへん足を痛めつけて、
自分から逃げたグループに、戻れる日を夢見て、
その日への希望だけを支えに、
左足を無駄にいじめて。
苦しんで…。
僕自身に問いたい。
何で、この人にされたことを、忘れていたん？
あんな、深い傷口、
脳がやられたくらいで、消せるものやないのに。
ここに入院して、
この人に、身を委ねて、
信頼を置いて、
すべて正しいと思い込んできた。
今日やて、
僕を助けに来てくれたわけやない。
記憶を取り戻すなんて理由つけて、
こうして、
いじめるためだけに、
やってきたんや。
さっき、病室に姿を現した時、
ホンマに、
感謝したんに…。
隆「もう、嫌や」
叫びでボロボロになった喉からは、
蚊の鳴くような声しか、
出せへん。
この人の悪意だらけの優しさを、
信じきって、
この人は、そんな僕を、
ずっと、
ずっと、
笑っていたんや。
隆「っ…」
冷えた体を萎縮させ、
僕は、由奈ちゃんに渡されたタオルを、ギュッと目に押し付けた。
潰れてしまえばいい。
そうすれば、
この人を視界に映すことはなくなるから…。
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INFINITY(プロフ) - いつも楽しみに見せていただいてます。閲覧希望よろしくお願いします！ (2019年5月20日 1時) (
レス) id: 8ddd0f17c0 (このIDを非表示/違反報告)
太陽丸(プロフ) - まとめてしまって申し訳ありません。こちらのページから友達申請をして頂けますでしょうか？→https://commu.nosv.org/bbs/bebe0725 (2019年5月19日 7時) (レス) id: c53d241486 (このIDを非表示/違反報告)
カナマル - 閲覧希望します！ (2019年5月18日 22時) (レス) id: cf75a14418 (このIDを非表示/違反報告)
すずまる(プロフ) - 閲覧希望です (2019年5月18日 9時) (レス) id: e1b3b87754 (このIDを非表示/違反報告)
あすか - はじめまして いつも楽しみにしております 閲覧希望です 宜しくお願いします (2019年5月18日 4時) (携帯から) (レス) id: c42cace51b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：太陽丸 | 作成日時：2019年3月24日 7時
