裕side ページ36
昼ご飯のカレーを、ほとんど食べへんかったというマル。
心配やから、何かしら食うといてほしいなと思って、
俺は、冷蔵庫にあったゼリーを持って、マルの元に向かった。
まさか、
あんな姿を目にするとは、思いもせず、
ノックをし、ドアを開けた。
裕「まる」
マルは、ベッドに体を起こした状態でおったんやけど、
俺の存在にも気が付かず、
手にしたボトルみたいなんを、ボンヤリと見つめていた。
何あれ…。
首を傾げながら、ふと、枕元の棚を見てみれば、
ヤスの、ネイル道具が広げられている。
マルが持ってるんって、あん中のやつ？
自分でも、やってみようとしてるんかな。
…なんて、
呑気な予想を、抱いたんも束の間、
裕「な、何してんねんっ！！」
マルの『異常行動』を目にした途端、
血の気が引いて、
俺は思わず、声を張り上げていた。
ボトルを奪い取り、床にブン投げて、
真正面から、呆然としたマルの両肩を掴んで、問い詰める。
裕「飲んでへんか？」
半開きになった唇は、
何かに濡れているようにも見えて、
俺は慌てて、服の袖で、それを拭い取った。
この液体が、ネイル道具で、
ボトルの中身のもんやとしたら、
決して、無害ではないはずや。
裕「マル！」
焦点の合ってなかった目が、ようやく俺に向けられた。
裕「今の、持ってたヤツ、飲んでへんよな！？」
隆「…うん？」
裕「これや、これ！」
俺は、ボトルを拾い上げてマルに見せる。
それは、除光液やった。
俺が部屋に入った時、
マルが口に持って行ったんは、
除光液やったんか。
口に入れちゃアカンものやって、
そのくらいは、俺にも分かる。
マルやて、
知ってるはずや。
それなんに、何で…。
しばらくは、無表情でそれを見ていたマルやったけど、
やがて、我に返ったんか、
ハッとなって、
青ざめていく。
隆「…飲んで…へん…」
裕「ホンマやな！？」
震えながらうなずくマル。
裕「この…アホがっ…」
腹立たしさと、悲しさ、
そして安堵感が押し寄せて、
俺はたまらず、マルのことを抱きしめていた。
裕「死ぬのだけは…アカンっ」
そう声を絞り出した途端、
目を押し付けていた、マルの肩が、
熱く濡れていくんを、感じた。
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作者名：太陽丸 | 作成日時：2018年9月9日 8時
