蜜柑side ページ4
一昨日、私はヤスくんからのLINEで、
まるちゃんの退院日を知った。
結局、お見舞いに来れたのは、一度きり。
あの時は、私たちのせいで、葡萄さんと苺さんにも、まるちゃんの病室を知られてしまった。
そして、
あの人たちは、やってきて、
まるちゃんを深く傷つけた。
負傷した腕を掴み、激痛を与え、
その時に付いた汗を、汚いと言いながら、シーツに擦り付け、
わざわざ隠していたであろう、尿のバッグまで晒して、
それを恥ずかしいと笑い、
トドメに、コテージでまるちゃんが苦しんでいる映像を、みんなの前で再生した。
最後、年下組に笑いものにされたことで、簡単に泣き出して、
まるちゃんが心配して差し出してくれたガーゼを、また汚いと罵り、踏みつぶした。
あんな思いを、
わざわざ押しかけてまで、まるちゃんに与えた、あの人たちが、許せなくて。
何より、あの人たちを、まるちゃんの元に誘導するような形になってしまった、私自身の行動が、許せなかった。
だから、もう、
彼の前に、姿を現す資格はないって、
そう思っていた。
でも、ヤスくん、LINEで言ってくれたんだ。
『マルも僕らも、君らのことを憎んでなんかいないで〜(´∀｀*)君らも後味悪いままやろうし、退院祝いにかこつけて、会いに行ったらどうやろう？』
正直、
ずっと、ずっと引きずっていた。
もう一度ちゃんと、ごめんなさいって、言いたかった。
だから、
私は檸檬ちゃんと話し合って、
今度こそ、葡萄さんたちに嗅ぎつかれないよう、慎重に、病院へとやってきた。
あと、どうしても…
まるちゃんに伝えたいことが、あったから。
隆「久しぶりやね」
まるちゃんは、後部座席の窓を開けて、顔を見せてくれた。
前に見た時より、痩せちゃったかな…。
でも、優しい笑顔をしている。
あの、悲しそうな顔が最後だったから、
胸に来るものがあった。
隆「ごめんなあ…」
私たちがモゴモゴしていると、
先に頭を下げてきたのは、まるちゃんだった。
「やめて！何でまるちゃんがそんな…」
隆「君たちは優しいから、きっと、あの日のこと、気に病んでいるんやろ？自分らが来なきゃよかったって」
心情をビンゴで当ててくれたまるちゃんは、
肩でため息をついて、もう一度、笑った。
隆「僕は、君たちが来てくれて、嬉しかったで」
「え」
隆「あんな楽しいひと時を過ごせて、何より君たちが、あの中傷を飛ばした子たちやなかったことを、確信できたんやもん」
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作者名：太陽丸 | 作成日時：2018年9月9日 8時
