裕side ページ26
何やねん！この男！
ほんま失礼やな！
俺とヒナは、バラエティのイメージがつきすぎてるせいや、絶対そうや！←
あーもう、さっさとDVD借りて帰ろ。
ため息を残し、雑誌売り場に背を向けた、
その時やった。
「関ジャニってもう一人いたじゃん？」
「うん、丸山くんね」
表紙にはおらへん、
元メンバーの名前が、現れて、
出かかっていた足が止まった。
「脱退して、何か月かして、病気ってカミングアウトしたんだったよね」
雑誌を手にしたまま、そう続ける彼女。
せや。
マルは、
俺たちにすら理由も言わずに、
関ジャニ∞から、
芸能界から、
去っていった。
軽蔑され、見捨てられることを望んで、
自分勝手な形で、脱退を選んだ。
病気のことも、麻痺のことも、
その後、メンバーとの付き合いが続いていることも、知られておらず、
丸山隆平と関ジャニ∞は、すっかり決別したように、思われてた。
一時は、あれだけ誹謗中傷で炎上した、脱退劇も、
世間では、もうすっかり過去のものとなっていたんや。
ところが、去年のクリスマスイブ。
マルが入院していた病院の、イルミネーションを見に行った時、
俺らは、何者かに盗撮され、ネットニュースに晒された。
その見づらい写真には、
曽根に強引に切られたせいで、歪になってもうた髪型で、車椅子に乗っているマルと、
そんなマルの頭を、ポンポン叩いているヒナの姿。
そして、周りで楽しげに笑っている俺らが写っていた。
掲載された記事には、
グループを『裏切った』メンバー、マルに対して、
残された俺らが、強い憎しみを持ち、
その復讐として、暴力を繰り返しているんやないかって、
何とも勝手な憶測が、語られていた。
車椅子なのも、髪型が歪なのも、
俺らの暴力や嫌がらせが招いたもので、
ヒナが笑顔で、マルの頭をポンポンしてるんも、
暴力やと、解釈されたんや。
そして俺らは周りで、
その様子を見て、笑っていると…。
まるで、集団いじめでもしているかのような、書かれようやった。
あれがきっかけやった。
みんなが悪者として誤解されたままなんて、絶対嫌やって、
それまで、自分の体のことを知られるんを、頑なに嫌がって、引きこもりがちやったマルが、
ヒナのラジオに出演を頼み込み、
脱退の理由、車椅子の理由、そしてあの記事への完全否定を、
限界まで、涙声を絞り出し、訴えた。
俺らを悪者にしたくない一心で、
ほんまに、がんばってくれたんや。
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作者名：太陽丸 | 作成日時：2018年9月9日 8時
