隆平side ページ18
裕ちんは、ずっと背中をさすってくれてた。
汗ばんで汚いはずやのに、
相変わらずの、優しい感覚。
裕ちんとは逆側に座って、僕を見守ってくれているんは、たっちょん。
一生懸命、作ったご馳走を、
あんな無残な姿にされて、
傷ついたよな…。
無意識やったからなんて、言い訳にならへん。
ごめんなさいって、
言いたかった。
こんなそばにおるんに、
何でか、声が出えへん。
その思いは、喉が破裂しそうなほどに、出たがっているんに…。
意識が、夢の中に移ってからも、
僕は解放されなかった。
ガシャンって…
さっきの、琉球グラスの破壊音。
それが、ひたすらリピートされ、
それに連動して、
真っ暗闇の中に、
破片の散らばっていく様子が、
スローモーションで、
リプレイされる。
そして、
その破壊音を、BGMに、
破片の散らばる映像を背景に、
突然、
木の丸太みたいなんが、ぽっと現れた。
何これ…。
一見、無関係なものの登場に、首を傾げていたんやけど、
次に浮き出してきたものを見て、
理解した。
そして、息が止まった。
それは、電動のこぎりやったんや…。
コテージに備え付けられた、
僕にとっては必要不可欠な、手すり。
それを切り落とした、
あの凶器。
激しい作動音と共に
高速で震えるその刃は、
丸太に垂直に当てられ、
ガリガリと音を立て、木屑を巻き散らかしながら、下りていく。
その木屑は、噴き出す血のようにも見えた。
そして、そんな激しい状況でも、
グラスの割れる音は、掻き消されることなく、響き続ける。
やがて切断された丸太は、
重い音を立てて、
落下した。
グラスと同じように、
その場面、その音は、
何度も繰り返され、
耳がえぐられそうな痛みを僕に与え続けた。
その壮絶さに発狂する間もなく、
現れたんは、歩行器。
コテージで、失った、
僕の足や…。
そして、それもまた、あの時と同じように、
床に打ち付けられ、
痛い音を立てる。
不協和音が何重奏にもなってるような、
不気味な演奏を、閉ざされた監獄の中で、聴かされているようやった。
同時進行で繰り返される、地獄の映像。
耳を塞いでも、消えてくれない。
瞼は、麻痺を起こしたかのように、
まばたきすらさせてくれへん。
視界から消せへん。
どこに顔を反らそうとも、
僕の周り３６０度で、残酷なパフォーマンスは、絶えず行われている。
どこにも逃げられへん。
逃げられへん…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：太陽丸 | 作成日時：2018年9月9日 8時
