亮side ページ15
リビングは、台風一過を思わせる静けさやった。
散乱した、食器やら料理やら飲み物が、寂しく俺らを見上げている。
それを、黙々と消してく村上くん。
隣で補助するんは、章ちゃんと明里ちゃん。
その作業で生まれる、割れたガラスがぶつかり合う音は、
鼓膜を突き刺してくるようで…。
バナナジュースの件は、事故やったわけやし、
左手しか使えへんことを配慮して、取っ手付きのもんにすべきやったなって、
逆に、申し訳なく感じていた。
お土産として渡されたもんを、割ってしもて、
マルも気にしてると思ってたし…。
でも、
テーブルクロスを引っ張った行為は、別や。
おーくらが、キッチンにこもって、一生懸命に作ってた料理。
これを囲んでお祝いするんやーって、マルの帰りを楽しみに待っていたその姿を、
見てたから…。
それでつい、
俺も怒鳴ってもうたけど…
村上くんの珍しい形相を前に、
その怒りも覆い隠されていった。
マルも驚いたんかな。
ドアの前で、震え、嗚咽する、その後ろ姿は、
今にも、砕け散りそうで…。
そんなマルを車椅子から下ろして、
横山くんが、負ぶる。
マルの負傷した右手は、しがみつく力がまだ弱いから、、
そっち側は、おーくらが支えて、
ようやく、マルは俺らの視界から姿を消すことができた。
部屋を出る。
たったそれだけのことに、人の手を煩わせ、時間をかけざるをえない、
マルが今、その現実を痛烈に感じているんやろうなって思うと、
たまらない気持ちになる。
俺らは、なかなか人に頼りたがらず、それを罪とすら思い込んでいるマルに対して、
幾度となく、もどかしさを感じ、時にはイライラしてきた。
それは事実。
今もそうや。
でも、そういうんも全部ひっくるめてマルやから、
それ込みで、支えていこうって、
そんな暗黙の了解みたいなんも、確かにあった。
村上くんは、
マルが、人の介助を必要とする体であることを、非難してるわけやない。
頼みたいこと、嫌なこと、それを積極的に口にできひん性格を、責めてなんかない。
今回、こんなに怒ったんは、きっと…。
す「…ヒナ」
忙しく手を動かし、マルの散らかしたもんを拾い集める村上くんの横に、すばるくんがしゃがみこむ。
信「分かってるで」
すばるくんが話を切り出すより先に、
表情声色に、動揺一つ含ませず、そう返した村上くんは、
信「けど、後悔はしてへん」
そう、
俺らの前で、言い切った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：太陽丸 | 作成日時：2018年9月9日 8時
