続・逆光【橙】４ (ページ14)

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すばるside ページ14

隠れて泣くこともできひんで、

1人を選ぶこともできひん。

しかもそれは、自分の体の障害が元凶となって、起きている、

そんな失望感に叩きのめされた、マルの後ろ姿は、震えていた。

ドアの前で進むことも下がることもできんでいる、そのでっかい車椅子は、

人ごみの中で親とはぐれた迷子のような、不安に纏われていた。

たぶん、マルが一番、俺らに見せたくない姿なんやろう思うと、

何の罪もない、このドアの幅が、憎らしくて仕方なくなっていた。

隆「…っ…う…。…っく…」

押し殺し切れずに溢れる嗚咽と、

顔に持っていかれる左手。

今マルは、

突き刺す７つの視線に、

どうしようもない痛みを感じていることやろう。

そんな姿を目の当たりにして、

この長男が、放っておくわけがなく…

裕「まる」

あの柔らかい声を持って、静かに寄り添う。

明里「隆平さん」

続いて、明里ちゃんが、マルの元に寄ったんやけど、

触れようとした、その華奢な手は、

すぐに背中を向けられ、

言葉はなくとも、拒否を示されてしもた。

マル…。

やっぱ、明里ちゃんに、

好きな女の子に、泣き顔を見られるんは、嫌やんな。

バレバレでも、

ギリギリのとこで、プライド保とうとしてんやな。

でもな…

別にええねんで。

自分が涙を見せることを、未だ罪に感じてるみたいやけど、

数々の理不尽な仕打ちをくぐり抜けて、

ここまで戻ってきたお前や。

泣きたいだけ泣かんと、

心が壊れてしまうで。

それが、自分の弱さを結び付くと思っとるなら、

それはちゃう。

流れた涙は、傷ついた心の消毒液。

化膿してからやと、手遅れや。

裕「部屋行こか。ちょっと休んだ方がええ」

そう言うとヨコは、俺たちの方を振り向いて、手を招いた。

誰か手伝ってくれてことやんな。

真っ先に向かっていったんは、おーくら。

マルを運ぶんなら、お前が確かに適任や。

章「じゃ僕も…」

…ん！？

いや、それはアカン！

今の格好忘れてるんか！？←

す「お前はええから」

章「何で？」

何でって…。

そのふざけた、白顔を見たら、

余計に、マルの感情グチャグチャにしてまうやろ←

ヨコも白いけど。

あいつは、ふざけて白くなってるわけやないからな←

す「マルのことはでっかい二人に任せて、俺らは片付けようや」

章「おん、わかったあ」

マルたちを送り出し、

振り返ると、

ブツブツ言いながら、ガラスの破片を集めているヒナの姿が見えた。