逆光【橙】３

隆平side ページ36

僕は、周りからの評価が不安で、未だにエゴサを断つことができない。

同じように今…体の中におるヤツが、これからどんな攻撃をしてくるんやろうって不安で、

病気に関する検索の手を、止められんでいた。


後遺症やとか、悪性やったらとか、

怖い情報を目にしてしまうと、

救いを求めて、色んなページに手を伸ばす。

でも、救いの手なんか返ってこない。


結局、自分自身で、迷路を複雑にして、出口を遠ざけてるだけやった。


隠し通しての仕事は、しんどかったけど、

舞台稽古の時だけは、楽やった。


マクベスでいる間は、

思う存分、絶望して、叫び、暴れることができる。

涙も、人目をはばからず、流せる。


演技という名目で、

僕の中から出たがっている感情を、ブチまけられるんや。

こんな恵まれた時間は、なかった。


舞台は、激しい動きも伴うから、

腰痛は、処方された痛み止めで凌いでいる。

その副作用だかストレスだか分からんけど、だるくてお腹も痛くなんねん。


でも、殺陣のシーンなんて、腰を庇いながらとか、アカンやろ。

だから、薬に頼らざるをえないねん。

多少の体の不調なら、隠せばええだけの話や。


病気の告知を受けて、一週間。

先日、僕は詳細説明を受けるため、再び病院に行った。


腫瘍は恐らく良性。

ただ、神経と絡み合っている状態やから、難易度の高い手術になるし、後遺症として麻痺が残る可能性も高い。


腫瘍は成長していくし、早めに手術するに越したことはないみたいやけど、

無理なんやて。

執刀できる医師が少ないんやて。

数ヶ月待ちが普通なんやって。


手術までの時間、

増大してく腫瘍を、黙って寄生させとくしかないなんて、

そんな生き地獄、ないやろ。


手術は、早くて９月の上旬になるという。

それまでの３ヶ月。

僕は、どうやって生きていけばええん？


裕「マル、時間やで」

隆「あ、今行く」

収録までの待ち時間、楽屋でボーっと台本を眺めていると、裕ちんが肩に手を置いてきた。

亮「寝不足？」

隆「おん、そうなんよ〜」

ぶっきらぼうながらも心配してくれる亮ちゃんに、ヘラヘラと笑って見せる。

章「台詞覚えもええけど、体も大事にしいや」

隆「ありがと」

この時期、舞台稽古と重なって、よかった。

食欲ないんも、稽古のストレスのせいにできるから。


そんな、嘘をついている罪悪感。


そして、それに加えて、

僕の日々の中には、もう一つの闘いが、あるんや。

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