逆光【橙】３

あなたside ページ26

隆「せや、渋やんにな、お見舞いの品があんねん」

お邪魔してから20分ほど経過した頃、思い出したようにカバンを探り始める隆平さん。

す「え、なになに？」

隆「じゃん！きっとこれで完全復活できるで！」

満面の笑顔で隆平さんが取り出した「お見舞いの品」

見るなり、私は飲んでいたコーヒーを噴き出しそうになった。


す「お♡これは期待大な感じやな」

隆「せやろ！絶対渋やん好きそうやて思ってん」

す「気が利くやん！」

隆「えへへ。喜んでもらえて嬉し…ん？明里ちゃん、大丈夫？」

噴き出してしまうのを阻止したせいで、気管の中へ流れ込んだコーヒー。

激しくムセてしまった私の背中を、

こうさせた張本人が、心配そうにさすってくる。


ああ、ビックリした…。

目の前で、AVの手渡しを見せられた私の身にもなってよ！


す「マル、明里ちゃんには過激やって。せめて袋にでも入れて渡し」

隆「あ、そっか。ごめんなあ」

イケナイ世界の想像が、嫌でも掻きたてられてしまう怪しいパッケージ。

そんなの手にしたまま、シュンとしないでよ←


お店に行って、こういうのが並んでいるコーナーの前で、あれこれ悩んだのかな←

でも、隆平さんのことだから、普通に『渋やん、どれ喜ぶかなあ〜』って、一生懸命プレゼントを選ぶ子供みたいに、無邪気な目をしていそう。

対象になっている物はともかく、そういう姿も、きっと可愛いだろうなあ。

今だって、頑張って選んだプレゼントが喜ばれて、満足している子供の顔だものね。

微笑ましい気持ちにすらなってしまう。


す「おし、さっそく頂かなアカンわ。一緒に見よか？」

！？何を言い出すの、このおじさん！←

隆「ええの？それじゃあ」

隆平も誘いに乗るんじゃない！！

明里「帰ります。渋谷さん、どうぞおひとりでごゆっくり」

私は隆平さんの腕を掴み、迷いなく立ちあがった。


す「何や、ツレへんなー」

女性をAV鑑賞に誘うほうが間違っています！

そして隆平さんまで汚染しないでっ←


隆「ごめん渋やん、また今度な」

す「お前らもええことしろや」

またこの人はそういうことをっ！


真っ赤になっている私の横で、ホワホワ笑っている彼。


この人、私の想い、気付かないのかな？

こんなに分かりやすく顔に出ているというのに。


まあ、気づかれたら気づかれたで、

その後、気まずくなるのは嫌だから、

彼の鈍感さには、感謝しているんだけどね…。

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