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この店を見るのは数年ぶりだ。隣にいる男に、就職祝いで連れてこられて以来かもしれない。店の引き戸を開けると、初老の店員がいい声でお決まりの文句を言う。
店員はこちらを見て、まず私ではなく男に声をかけた。とわこではなく本名で呼ばれる彼とのやり取りが酷く懐かしい。
「後ろにいるの、Aちゃんやんか！」
「お久しぶりです」
「久しぶりやなぁ、いつぶりや？元気にしとったか」
「元気でしたよ」
さらりと嘘をついてみせると、隣の男に呆れられた気がした。それをものともせず奥の席に座る。
「仕事は今日休みなんか？」
「ううん、職変えようと思って戻ってきたんよ」
「そうかそうか！まだ若いもんなぁ」
若いで転職が済まされる年齢でよかった、なんて安堵しつつ昔から変わらないメニューから定食Aセットを頼んだ。
1人しかいない店員兼店長は厨房へ引っ込んで行く。部屋は私と目の前の男しかいなくなって、こんなんで商売成り立つのかな、なんて考える。だが私が心配したって変わらない。店のメニューを暇つぶしに見ている男に視線を戻す。
「…いつ帰るん？」
「明日の朝」
「あんた結構こっち帰ってきてんねんな、知らんかった」
「君が帰らなさすぎるだけちゃう？」
煽るように言ってくる彼に肩をすくめる。心配しなくても、当分私はこっちにいる。それは彼も知ってるだろう。
「でも仕事ないと実際なんもやることないわ」
「はぁ？頭おかしいんか？」
「私もあんたみたいに、趣味見つけななぁ」
「いいゲーム教えたろか？」
「うちのパソコン古いのしかないもん」
「金余ってるやろ、買え」
確かに、賃貸の違約金とか引っ越し代入院代諸々払ってもお金は少し余った。両親が出してくれたからという理由もあったが、私がほとんど人間らしい暮らしをしていなかったのもあるだろう。
「奨学金返してからかな」
「そんな残ってんのか」
「ううん、あとちょっと」
「じゃあ買え」
「めっちゃ推すやん、こわ」
布教したいゲームがあるんだろうか。残念ながら私は幼少期に少なからずこの男の影響を受けている。学生時代はこいつのやってるゲームを私もやっていた。
「…まあ色々やったらええやろ、飽きるまで」
「うん」
程なくして、頼んだAメニューがやってきた。そこには学生時代と何も変わらない古い食器の中に、懐かしい味があった。
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ぬ - ああああああ！！！！更新停止……！！！数年前の作品ですしもう届かないかもしれないですが文章から情景がとても伝わってきて好きです……！！ (2020年10月19日 1時) (
レス) id: 34bf2c87c5 (このIDを非表示/違反報告)
もっち(プロフ) - SAKANAさん» や！やった〜！とっても嬉しいです！今忙しくて更新進めるのも遅くなりそうなのですが、よければまた見てやってください〜！ (2018年7月22日 21時) (レス) id: 1c2917eb3f (このIDを非表示/違反報告)
SAKANA(プロフ) - 好きです…とわぽんのこういう夏のお話待ってました…夏の暑さ、息苦しさなんかが文章一つ一つに感じられて好きです…更新頑張ってください… (2018年7月21日 21時) (レス) id: a3a9931e24 (このIDを非表示/違反報告)
もっち(プロフ) - しぃさん» ありがとうございます！体調が芳しくなく、進みが遅いのですが気長に待ってやってください (2018年6月22日 23時) (レス) id: d1689b7237 (このIDを非表示/違反報告)
しぃ(プロフ) - 文章から情景が浮かんで見えるようで、作品全体から夏独特の切ないような雰囲気を感じて凄く好きです。更新楽しみにしています！ (2018年6月22日 16時) (レス) id: a19881d269 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もっち | 作成日時：2018年6月4日 11時
