おとなりさんちのあのひとは【M/S/S/P】【完結】

きらきらひかる.E ページ31

疲れた、と本気でそう思った。家に帰ってすぐ、ぼふんとベッドに倒れこむ。なんだか我が家が久しぶりだ。

ライブもひと段落して、明日からやっと自分の時間を作れるようになる。とはいえたまった洗濯とか掃除をしなくちゃいけない。ただ、今は全部忘れて横になっていたかった。


ぶるる、とスマホが震える。ズボンのポケットを漁るとすぐに見つかった。気だるいまま通知欄を見ると、もう見慣れたAさんからのメッセージ。

『お疲れ様でした』

それだけのメッセージが、すごく体に染みる。ライブのことも大きな仕事が立て続く、としか言ってないにも関わらず、Aさんは何も聞いてこなかった。ただ、短いメッセージで労ってくれる。それが嬉しい。

彼女からの文字を少し見るだけで、動く気がやや蘇った。上着をハンガーにかけて、放り出した荷物を少し分けて。そうすると、またベッドに倒れこむ。

彼女とは、もう長い間文字だけのやり取りになっている…というのは嘘だ。正確には、Aさんのなかでは正しい、と言えばいいのだろうか。
ただ俺は、一度だけ彼女を見た。ライブが終わって、ファンと少し交流できる場で、一瞬だけ。そのあとも忙しかったし、彼女の顔を見たことだけしかちゃんと覚えていない。

ただ、彼女がとても楽しそうで。その笑顔が眩しくて。その印象が強すぎた。細かいことが飛んでいってしまうほどに。

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