はじめまして.E ページ1
「あ」
マンションのポストを覗き込んでいると、女性の声が聞こえる。髪を綺麗に後ろにまとめて、スーツを着た女性。その声に目をやって得た情報がこれだった。綺麗な人だとなんとなく思っていると、彼女と目が合う。
「乗ります？」
「あ、どうも」
何も入っていなかったポストをぱたんと閉めて、急いでエレベーターに乗る。閉まっていく扉にちらりとボタンを見ると、すでに自分の階は押されていた。同じ階の人かもしれない。
ぽん、と音がなって、到着をつげるエレベーターの機械的な音声を聞きながら、邪魔にならないようすぐに出る。少し視線を彼女に向けて、ぺこりと頭を下げるとはにかんだ顔が浮かんだ。困ったときのように眉尻を下げて笑う顔は社会人の風格というか、そういうものを感じさせた。
かつ、かつ。
ヒールが床を叩く音が静かな廊下に響く。
かつ、かつ。
遠ざからないその音に少し違和感を覚えつつ、ポケットの鍵を探る。冷たい金属の感触があって、それを手に取って鍵穴に刺した。がちゃ、という音と同時に、ハイヒールの音が止まる。視線をふとあげると、彼女がまた眉尻を下げながら笑った。
「お隣さん、だったんですね」
彼女は革の鞄を開けて、すぐ鍵を出して鍵穴にさす。
「これも何かのご縁ですかねぇ、よろしくお願いします」
「…よろしくお願いします」
俺の言葉を聞いてまた笑った彼女は、かちゃりと開けたドアの向こうに消えていった。
隣の彼女の部屋は、俺の部屋のリビング側に近い。す、っと頭が冷えていく。リビングでゲームをしながらスカイプをつけてゲームをすることも結構ある。
一緒にやってるやつよりはうるさくはないけど、俺だってうるさい時もある。それこそ夜中に。壁ドンはされたことないが、声に気をつけなくちゃいけないかもしれない。
ドアを開けて中に入り、後ろ手で鍵を占める。リビングへまっすぐ進み、鍵や荷物を置いて、パソコンの電源を付ける。飲み物を入れて戻ってくると、スカイプの通知音が聞こえた。それをクリックすると、すぐに電話がかかってくる。
『おせーぞえおえお！』
「わり、カップ麺買いに行ってた」
『うわぁこんな夜中にカップ麺とかえおえおちゃん太っちゃうよ〜！』
『お前さっきピザ食ってたろ』
『えおえお〜準備いい〜？』
「まって、もーちょい」
実況者えおえお。それが俺のもう一つの名前。どうか向こうの部屋の人が、俺に気付きませんよう。
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もっち(プロフ) - さくらんぼの種さん» はわわ嬉しいです！そんなに言っていただけるとは！新作も頑張っていきますのでよければお付き合いください！前も今回もコメントありがとうございました！ (2018年6月4日 20時) (
レス) id: d1689b7237 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼの種(プロフ) - 完結おめでとうございます！更新されるたびにドキドキして楽しく読ませてもらいました。これからもちょくちょくきて、一気読みしたりしますね。何回読んでも飽きないこの作品が大好きです。新作、楽しみにしてます！ (2018年6月4日 16時) (レス) id: 3066f17872 (このIDを非表示/違反報告)
もっち(プロフ) - 金平糖さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！ずっと見ていただいてくれていたんですね！本当にありがとうございました (2018年6月4日 14時) (レス) id: d1689b7237 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖(プロフ) - 完結おめでとうございます！書き方とか、表現とかがとても上手で、見やすかったです。更新される度ワクワクしてました。あと勉強になりました。ありがとうございます。 (2018年6月4日 14時) (レス) id: 942887e5ad (このIDを非表示/違反報告)
もっち(プロフ) - さくらんぼの種さん» ひええ…コメントありがとうございます！嬉しいです。至らない点あると思いますが、絶対に完結させますのでよければお付き合いください (2018年4月23日 9時) (レス) id: d1689b7237 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もっち | 作成日時：2017年7月14日 0時
