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「ないなと思ってたらそこにあったんだ」
「...昨日までおったんやろ？今日大阪帰ったんやったっけ」
「ここにいたのは初日だけ。あとはホテルに行っちゃった」
「そうなん？４、５日おったよな？」
「そうなんだけどね」
苦笑する顔を見て、動画の打ち合わせでリリーに会ったときのことを思い出した。
あの不機嫌な態度には、Aが関係しているのは間違いない。
「たぶんその次の日やと思うけど、仕事で一緒になってんけど、」
「うん」
「なんかむっちゃ機嫌悪くて。盛山ブチ切れとったわ」
「そう...盛山さんに悪いことしちゃったな」
相変わらず苦々しい笑みを浮かべたまま、ぽつりとAは言った。
そういえば、核心部分はリリーからは聞けていなかった。
聞けたのは、意外に不安定なその胸の内。
それだけでも充分だと思っていたけれど、俺の言葉にAの表情があまりに素直に曇っていくので、違和感を感じずにはいられない。
ワインにひと口、口をつけて、Aが話し出した。
俺はチーズに手を出しながら聞いた。
「聞いてるかもしれないけど、リリーさん、もうすぐこっちに引っ越してくるかもしれないんだって」
「あー、まあそやろなぁ」
「半年か一年か...とにかくそれくらいのうちには、来ることになりそうなんだって」
「うん」
「そしたら一緒に住もうって」
胸にチクリ、と何かが刺さった。
チーズが口の中で独特の香りを放ちながら溶けていく。
チーズと刺さった何かを流すためにグラスのワインを一気に飲み干して、胸が焼けるように熱くなった。
「...そうなんや」
「でも、私...即答できなかった」
「...うん」
「少し考えたいって言ったの。そしたらリリーさん、黙っちゃって」
「...そうか」
自分の吐いた息のアルコール臭に、更に酔いそうになる。
何を考えているかわからない。不安になる。
リリーがそう言った理由は、ここにあったのか。
即答でハッキリさせなくとも、お互いに黙ってしまうような状況になったのでは、断られたに等しいというのは俺にでもわかる。
「次の日から来なくなっちゃって。連絡はくれるんだけど...」
「うん」
「彼女だったら普通、すぐOKするよね」
感じ悪いよね、私。と力なく笑う。
困ったような、諦めているような、そんな表情で。
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えむ(プロフ) - ハンナさん» ハンナさん、いつもありがとうございます！そう言っていただけるとやる気が出ます笑 #2でお待ちしていますね☆ (2021年5月22日 10時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ハンナ(プロフ) - ンフフフ…やっぱりえむさんの書くお話…好きです……たまらんです☆続きが楽しみ…… (2021年5月22日 0時) (レス) id: 9d1b7de85f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年5月4日 22時
