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俺のほうこそ、本当に嬉しくて仕方がなかった。
この一年、大阪には何度も通っていたけれど、卒業前のAにとって大事なときだからと誘うのを控えて、サナギのようにじっと我慢してきた。
その一年が過ぎて、今日やっと会えて、これからもまた、会えるなんて。
目の前で、すぐに手が届きそうな距離で、Aを見つめていられるなんて。
あんなに長かった一年が、昨日のことのように消えていった。
Aの笑顔が全部、昨日までの寂しかった俺を救ってくれた。
まだ薄暗かった外の世界は、店を出た頃にはすっかり紺色に染められていた。
「大丈夫かぁ？」
隣を歩くAの足取りが、ここへ着いたときと比べて明らかに遅くなっていた。
俺を見上げてふにゃっと笑う顔は、まあ、ほどよく酔っている。
「久しぶりに飲んだから...」
「具合悪い？」
「んーん。大丈夫。ふわふわしてるだけ」
ふわふわ、という言葉がぴったり過ぎて、妙に納得してしまう。
そういえば、そうだった。
昔からAは酒が強いほうではないけれど、酔うと具合が悪くなるというよりは、なんていうか、ふにゃふにゃになる。
「タクシー拾おか」
「はーい」
「具合悪なったら言うんやで？」
「はーい」
ふにゃふにゃだけど、返事ができるのなら、まだ大丈夫か。
通りすぎるタクシーの表示灯はどれも「賃走」や「予約」ばかりで、なかなか乗れそうなものが通らない。
繁華街だし、時間も時間だし、みんな考えることは同じなのだろう。
少し歩きながら「空車」のタクシーが通るのを待とうということになって、何列にもなって続く車のテイルランプを横目に歩く。
Aの歩幅に合わせてゆっくりと進むのは、俺にとっては心地よかった。
夜風が火照った頬に当たって気持ちいいのと、ときどき俺を見上げてふにゃっと笑うAが、何とも言えずかわいいのと。
なんだったらこのまま、ふたりでどこまででも歩いていけそうな、そんな気さえしていた。
「明日は休みやったっけ？」
「うん、お休み」
「よかったな、ゆっくり寝てられるな」
「アラームかけないで寝るー」
「最高やん、それ」
話しながら、自分はどうだったっけ...と、今日事務所で確認したスケジュールを頭の中に広げていると、ふとAが足を止めた。
俺もつられて立ち止まる。
Aは上着のポケットからスマホを出して、画面を見た。
「...あ、賢志郎さんだ」
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えむ(プロフ) - ハンナさん» ハンナさん、いつもありがとうございます！そう言っていただけるとやる気が出ます笑 #2でお待ちしていますね☆ (2021年5月22日 10時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ハンナ(プロフ) - ンフフフ…やっぱりえむさんの書くお話…好きです……たまらんです☆続きが楽しみ…… (2021年5月22日 0時) (レス) id: 9d1b7de85f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年5月4日 22時
