再会と衝動 ページ1
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新しい仕事が決まった、と連絡があったのは冬の真っ只中だった。
本当ならばすぐに会って盛大に祝いたいくらいだったけれど、時間も距離もそうさせてはくれず、「おめでとう」と返信を打つくらいしかできずにずっともどかしく思っていた。
それから毎日忙しくしていたらあっという間に春になって、今日、一年ぶりにAに会える。
待ち合わせの場所を駅にしたのは、上京して間もないAを気遣ってのことだった。
ここ東京に関しては俺のほうが一年先輩。
土地の名前や店の名前を指定したところで、わけがわからなくなるのは目に見えている。
だから、待ち合わせはAの新居の最寄駅にした。
それなら迷うこともない。
一年先輩による、一年後輩への優しさだ。
...というのは建前で、Aがどんな街に住むことにしたのか、興味がなかったと言えば嘘になる。
これから始まるAの新しい生活に、少しでも俺が入っていけたら。
東京へ来ると連絡をもらったときから、そんな期待を感じずにはいられなくて。
小さな駅の外で待っていると、仔犬のように弾んで駆け寄ってくるAの姿が目に飛び込んできた。
「ゆずるさん！」
「おー、久しぶり」
Aが俺の前に立ち、向かい合った瞬間、一年前に一気に引き戻されて肩の力がふっと抜けた。
一年ぶりに見たその笑顔は何も変わっていない。
年齢のわりにあどけなく、天真爛漫な子供みたいな笑顔。
東京に来て会えなくなってからも、途端に忙しくなって疲れ果てていても、どんなにキラキラ、素敵な人に出会っても。
ずっとずっと、その懐かしい笑顔が忘れられなかった。
「やっと会えたー」
「なあ。やっとやな」
なんてことないように平然とした態度でそう言って、本当は、ぎゅっと抱きしめてしまいたい衝動を抑えるのに必死だった。
そんなの、一度だって実行したことはないけれど。
思うだけなら強気でいられる。
現実はそうじゃない。
駅から電車に乗って繁華街へ出て、予約していた店の個室の席に着くと、すぐにシャンパンが運ばれてきてAは目を丸くした。
背の高いグラスが目の前に置かれる様子を、息を潜めて見つめている。
これから何が起きるんだ、というような、少し落ち着かない表情で。
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えむ(プロフ) - ハンナさん» ハンナさん、いつもありがとうございます！そう言っていただけるとやる気が出ます笑 #2でお待ちしていますね☆ (2021年5月22日 10時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ハンナ(プロフ) - ンフフフ…やっぱりえむさんの書くお話…好きです……たまらんです☆続きが楽しみ…… (2021年5月22日 0時) (レス) id: 9d1b7de85f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年5月4日 22時
