聞かなきゃよかった ページ5
( りりー
ゆず兄に指定された店で、ひとり待ちぼうけを食らっていた。
待ち続けて30分を過ぎた頃、もうすぐ着く、と連絡があって少しホッとする。
(...早く来んかなー)
スマホでSNSをチェックして、読みかけの本に目を通して、すぐ閉じて。
忙しくなってあんなに欲しかったひとりの時間なのに、今はなんとなく持て余していた。
ここ何日も、ひとりになると、どうしても考えてしまうことがある。
それを考え出すと、答えを見つけたいような、見つけたくないような、堂々巡りの迷路の中に入ってしまうようで、自分でも混乱してしまう。
ー無理です。ごめんなさい。ー
忘れられない、俺を拒絶したAちゃんの顔。声。言葉。
受け入れてもらえないというのはこんなにも苦しいものなのかと、今まで感じたこともないような寂しさが胸から離れない。
でも、それも仕方がないことだ。
俺にどうこう言える権利なんかないってことくらいよくわかっている。
向こうからはちゃんと答えを出されているのに、見ないようにしているのは俺だけなのだから。
深く溜息を吐いてまたスマホを拾うと、ドアの向こうから、こちらです、という店員の声と、そのすぐ後に、すんません、という聞き覚えのある声がした。
ちょっとハスキーで特徴のある、これはゆず兄の声だ。
「失礼します。お連れ様がいらっしゃいました」
店員の声と共に木製の引き戸が開けられ、相変わらずやけに小洒落た私服をまとったゆず兄が現れた。
もはやこの人は東京人だな。
「おつかれー」
「おつかれっす...、あれ」
挨拶を口にしながら、少し驚いた。
ゆず兄の後ろから、賢志郎さんが顔を覗かせたのだ。
こちらはいたってシンプルイズベスト。
そっけないほどに、そしていつも通りに。
「帰りに局で会うてん」
「あ、そうなんすね」
「ちょっと時間空いた言うから連れてきた」
そう言ってゆず兄は俺が空けていた奥の席に座り、その隣に座るように賢志郎さんを促す。
賢志郎さんも誘ったけれど忙しいようで断られた、とゆず兄からは前に聞いていた。
話はいつのまに変わっていたのか。
「この後別んとこ行かなあかんから、ちょっとだけ」
賢志郎さんは席につき、斜め向かいの俺を見て言った。
俺も、はい、と頷く。
なんだかこういう場でこの３人で、というのも不思議な気がする。
新鮮といえば新鮮だし、妙といえば妙。
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えむ(プロフ) - mugiさん» mugi様、コメントありがとうございます！続編に関しては、前向きに考えてみたいと思ってます☆新しいお話も進行中ですので、楽しんでいただけたら嬉しいです！また遊びにきてくださいね^_^ (2021年5月6日 23時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
mugi(プロフ) - 毎回更新を楽しみに待っていました。登場人物が個人的に大好きな方達ばかりだったので、とても楽しく拝読させていただきました!続編、需要しかないと思うのでぜひ!!新しいお話もどんな展開になるのか楽しみです(^o^) (2021年5月6日 0時) (レス) id: 354875201d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - えみさん» えみ様、コメントありがとうございます！なんと嬉しいお言葉(T ^ T) 最後まで読んでくださって嬉しいです！今後ともぜひよろしくお願いします☆ (2021年5月4日 15時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
えみ(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。今まで読んだものでトップでよかったです！リリーさんが気付くコンビニからのシーンがすっっごい良かったです！しかも賢志郎くんも確信犯だった事も最高でした。次も楽しみに読ませていただきます (2021年5月4日 1時) (レス) id: 48f6541e7c (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - ハンナさん» ハンナ様、いつもコメントありがとうございます！あ、そうですね...その後どうなったのか私も気になります笑 やっぱりいつか続きを書きましょうかね！？毎回甘々ワードを考えるのが楽しかったので、反応していただけて嬉しいです☆ (2021年5月3日 23時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年4月16日 23時
