まさか ページ25
( りりー
午前の仕事を終え、その足で劇場へと向かった。
東京でのスケジュールがバタバタならばホームの大阪では更にバタバタで、相乗効果か何か知らないけれど、どっちにいようとも目まぐるしいのは変わらない。
そんなわけで、劇場に到着したのは殆ど入り時間ちょうどになった。
裏口にはいつものようにファンが溢れていて、一旦立ち止まって様子を見る。
声援に愛想良く応えて、そそくさと中へ入って行く仲間の姿も見えた。
落ち着くまで待っている時間もないし、まあ、行くしかないかな。
そう思って踏み出そうとしたそのときだった。
「...あれ、」
ふと目を向けた正面の入口から外へ出てくるその人に気づいて、足が止まる。
(...そう、やんなぁ？)
時間にしてほんの数秒、目を凝らして検分する。
間違いない。Aちゃんだ。
なんでこんなところに？
ここ...大阪だよな？？
Aちゃんはひとりで劇場から出て、俺のいるほうには振り向きもせず、反対の方向へと行ってしまった。
条件反射的に駆け寄り、すぐに声の届く距離に追いついて声をかけた。
「待って」
「...えっ、」
振り向いて、キョトンとした丸い目が俺を見る。
「...リリーさん、」
その声を聞くのも、いつぶりだろう。
東京へは相変わらず毎週連泊しているけれど、劇場の出番が入っていなかったこと。
やっと出番が入ってカフェに行ってもAちゃんがいなかったこと。
いくつかの要素が重なって、ここ1ヶ月近く、まったく会えなくなってしまったから。
「久しぶりやん」
「そう、ですね」
「なにしてんの？」
「ちょっと...旅行」
「ひとりで？」
「そう。一人旅です」
何食わぬ顔でなんとか言葉のラリーを続けたけれど、内心では、突然の再会に俺らしくもなく胸が昂っていた。
俺を見上げて笑うその顔を、悟られないよう、平静を装って見つめるのが精いっぱいだった。
「見に来てたん？」
チラリと劇場に目を向けて言うと、Aちゃんははい、と頷いた。
「もう帰るん？この後俺出番あるんやけど」
「見たかったんですけど、チケットが取れなくて」
「あー、そうなん」
「待ってる人いっぱいいますね。リリーさん、人気者だから」
.
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えむ(プロフ) - mugiさん» mugi様、コメントありがとうございます！続編に関しては、前向きに考えてみたいと思ってます☆新しいお話も進行中ですので、楽しんでいただけたら嬉しいです！また遊びにきてくださいね^_^ (2021年5月6日 23時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
mugi(プロフ) - 毎回更新を楽しみに待っていました。登場人物が個人的に大好きな方達ばかりだったので、とても楽しく拝読させていただきました!続編、需要しかないと思うのでぜひ!!新しいお話もどんな展開になるのか楽しみです(^o^) (2021年5月6日 0時) (レス) id: 354875201d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - えみさん» えみ様、コメントありがとうございます！なんと嬉しいお言葉(T ^ T) 最後まで読んでくださって嬉しいです！今後ともぜひよろしくお願いします☆ (2021年5月4日 15時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
えみ(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。今まで読んだものでトップでよかったです！リリーさんが気付くコンビニからのシーンがすっっごい良かったです！しかも賢志郎くんも確信犯だった事も最高でした。次も楽しみに読ませていただきます (2021年5月4日 1時) (レス) id: 48f6541e7c (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - ハンナさん» ハンナ様、いつもコメントありがとうございます！あ、そうですね...その後どうなったのか私も気になります笑 やっぱりいつか続きを書きましょうかね！？毎回甘々ワードを考えるのが楽しかったので、反応していただけて嬉しいです☆ (2021年5月3日 23時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年4月16日 23時
