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「おかん、Aだけでもいいからまた来てほしいって言うてたわ」
「えー、嬉しい」
「ありがとうな。俺も嬉しい」
「うん」
「家族ってこういうもんなんやなぁ」
しみじみとけんちゃんが言うので、私もしみじみ、よかった。と思った。
けんちゃんの実家にひとりで訪ねて行けること。
けんちゃんの育ったおうちの人にあたたかく迎え入れてもらえること。
家族として認めてもらえているということ。
たくさん大変なこともあるけれど、もうそれだけで、じゅうぶんすぎるほどの幸せをもらっている。
ここに来て本当に、本当によかった。
「いつか式とか、できたらええな」
不意にけんちゃんが言い出して、私は思わずその顔を凝視した。
「親きょうだいだけでも呼んで、どっか静かなところでさ」
「...けんちゃんがそんなこと言うとは思わなかった」
「なんで？俺やって考えてるよ、いろいろと」
またニコニコして、私をまじまじと見つめ返して言う。
「Aはどんだけ綺麗になるんやろなー、とか」
鼻の奥がツンとくすぐったくなって、ほんのちょっと泣きそうになっている自分に気づく。
誰にも秘密の結婚だから、そんなもの当然望めないと思っていた。
ハッキリと言われたわけではなかったけれど、暗黙の了解みたいなものでそう信じ込んでいた。
だから、けんちゃんがそんなことを考えていたとは、想像もしていなかった。
嬉しいのと、気恥ずかしいのと、驚きと...
いくつもの感情が同時にやってきて、処理しきれない。
「実は俺な...こないだ、結婚なんてせんほうがよかったんかなーって思ったんよ。一瞬」
少し気まずそうにけんちゃんが言う。
赤ワインのコップはとっくに空になっていて、いつのまにか２杯目が注がれていた。
「Aが仕事辞めるって言うたとき、俺がAの邪魔してるんちゃうかって思って。ほんなら結婚なんてする意味なかったんちゃうかって、思えてきて」
「...うん」
「でも、ちゃうな。してよかったわ、結婚。なんか今むっちゃ幸せやもん」
照れずに言ってくれるのは、お酒のせいだろうか。
「一緒におってくれてありがとうな、A」
「うん。私こそありがとう、けんちゃん」
こうやってふたりで笑っていられるのなら、もう、そんなのどっちでもいいね。
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えむ(プロフ) - mugiさん» mugi様、コメントありがとうございます！続編に関しては、前向きに考えてみたいと思ってます☆新しいお話も進行中ですので、楽しんでいただけたら嬉しいです！また遊びにきてくださいね^_^ (2021年5月6日 23時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
mugi(プロフ) - 毎回更新を楽しみに待っていました。登場人物が個人的に大好きな方達ばかりだったので、とても楽しく拝読させていただきました!続編、需要しかないと思うのでぜひ!!新しいお話もどんな展開になるのか楽しみです(^o^) (2021年5月6日 0時) (レス) id: 354875201d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - えみさん» えみ様、コメントありがとうございます！なんと嬉しいお言葉(T ^ T) 最後まで読んでくださって嬉しいです！今後ともぜひよろしくお願いします☆ (2021年5月4日 15時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
えみ(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。今まで読んだものでトップでよかったです！リリーさんが気付くコンビニからのシーンがすっっごい良かったです！しかも賢志郎くんも確信犯だった事も最高でした。次も楽しみに読ませていただきます (2021年5月4日 1時) (レス) id: 48f6541e7c (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - ハンナさん» ハンナ様、いつもコメントありがとうございます！あ、そうですね...その後どうなったのか私も気になります笑 やっぱりいつか続きを書きましょうかね！？毎回甘々ワードを考えるのが楽しかったので、反応していただけて嬉しいです☆ (2021年5月3日 23時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年4月16日 23時
